豚がオルガンを弾いてる風刺画を描かれた…

 ヘンデルは友人関係も幅広く、文化人、財界、政界、上流階級の人々としっかりパイプがありました。投資にも熱心で、お金があったのでしょう。自宅にはヴァトーやプッサンらの絵が60点以上あったそうですし、大変なグルメで、赤ワインはボルドーが好きだったと伝わっています。1日6食も食べていた時もあったそうで、当時の新聞にはヘンデルを揶揄して、豚がオルガンを弾いている風刺画が掲載されたこともありました。

没後の資産は2億円超!?豪快なやり手ビジネスマンだった音楽家ヘンデルヘンデルを豚にたとえた風刺画

 屋根裏部屋で隠れて音楽の勉強をしていた男の子は、みずからの力で世界を切り拓いていきました。音楽的才能だけではなく、外交術にも長け、しっかりその土地のキーマンの心を掴み、彼らの喜ぶ音楽を見事につくりました。株の売買でお金を生み演奏会を回していくなど、ヘンデルは今で言うプロデューサーです。

 ヘンデルは特に和声を積み重ねて進行させ、高音部に美しい旋律を乗せていく技術(ホモフォニー)に長けていましたから、オペラのアリアの美しいことといったらありません。ロマン派のオペラのようで、作曲年代を間違えそうです。

 ヨーロッパでもヘンデルのオペラは長らく忘れられていましたが、1990年代以降、復活上演されるようになったそうです。バロック時代の管弦楽法ですから、木管楽器は少数ですが、金管楽器(トランペットやトロンボーン)は比較的多く使用されており、実に華やかな効果をあげています。日本でも上演される機会が増えるかもしれません。

 生涯独身を通し、ひたすらエネルギッシュに生きたヘンデル。死後、ウェストミンスター寺院に埋葬され、ヘンデルのお墓の隣りは、あの偉大な小説家チャールズ・ディケンズ(1812~70年)です。ハレルヤ!

※1 ベートーヴェン『ベートーヴェン 音楽ノート』小松雄一郎訳編、岩波書店、1957年
※2 三ヶ尻正『ヘンデルが駆け抜けた時代:政治・外交・音楽ビジネス』春秋社、2018年
※4  D・J・グラウトほか『新 西洋音楽史 中』音楽之友社、1998年、206頁
※5 上同、207頁、引用のうえ一部加筆