中国で、北京五輪などの開発のため強制的に土地を収用された農民たちの不満が爆発している。農民人口が8億人以上もいるといわれている中国で、土地を奪われた農民の中には、立ち退きに抵抗して焼身自殺する人も現れた。
農薬や汚染など、中国の深刻な食品問題を根本的に解決するには、実は農業の改革が必要不可欠だ。最低限の生活さえ保障されていない貧困な農村地域では、農薬使用のリスクや、工業地域からの汚染された水による農業への悪影響さえ、理解する場が与えられていない。これが貧富の格差を、さらに激化させているといってもいい。
そうした中、10月9日から12日にかけて開催された中国共産党の第17期中央委員会第3回総会では、「農村改革・発展の推進の若干の重大な問題に関する中共中央の決定」が審議・採択された。農村の経済発展を政策面で促進していく方針が示された格好だ。農村改革を課題とする政府は、「2020年までに農民一人あたりの収入を08年の2倍にする」という目標を掲げた。
人民日報の社説「改革開放の主導権を掌握し、経済・社会の新たな発展を推進」も、「中国の農業の基盤は依然脆弱で、最も強化を必要としている。農村の発展は遅れ、最も支援を必要としている。農民の収入増加は困難で、最も加速を必要としている」としている。
さらに社説は、「中国では都市部と農村部の二元構造からの脱却を加速し、都市部と農村部の経済・社会発展が一体化した新構造を構築する重要な時期に入っている。工業が農業を促し、都市部が農村部を牽引する発展の段階に入っている」と続く。
年収2倍計画と
土地制度改革の効果は限定的か
ところで、なぜ農業分野の発展が遅れてきたのか? それは、農業改革をするということは、社会主義全体を見直すことにもつながるからである。土地の「公有制度」という社会主義の建前の中で、どうやって農業を発展させていくかが問題であった。
しかし完全な私有化は、社会主義制度の崩壊にもつながる。緩やかな民主化を意識している中国政府がいきなり急激に路線を変更することは、これもまた至難の業である。
結局、政府がとった対策は、「現行、農民の土地請負経営権(使用権)がこれまでは30年だったが、これを70年に延長する」、など農民の一時的な機嫌をとった形になった。それでも土地の流通が自由に行えるようにはなった。土地の売買が自由になれば改革も起こしやすい。