真宗大谷派難波別院(大阪) 投稿者:@tsumurayukiwo [9月15日]

バカボンはお釈迦さま!?

 半世紀前に『週刊少年マガジン』で連載が始まり、現在までに5回もアニメ化された『天才バカボン』は、赤塚ギャグ漫画の金字塔です。

 フジオ・プロがあった「中落合」に住んでいる設定のバカボン一家は、バカボン、弟のハジメちゃん、パパ、ママの4人家族でした。このバカボンという名前は「薄伽梵(ばぎゃぼん)」、つまりは仏に由来しているとも言われています。実は仏教を意識した漫画なのです。

 「おでかけですか」と声をかけてくるレレレのおじさんは、チューラパンタカ=周利槃特(しゅりはんどく)が元になっているといわれています。お釈迦さまは教えを何も覚えられない彼にほうきを渡し、毎日僧院を綺麗にしなさいと説きました。それ以来、彼は言いつけを忠実に守り、毎日掃除に専念し、最後には自分自身の因縁も掃き清め、悟りに至ったと言われています。

 お釈迦さまは優秀な弟子もそうでない弟子も、分け隔てなく拒否せずに受け入れました。バカボンのパパの決めゼリフ「これでいいのだ」という言葉はお釈迦さまの姿勢にも沿っています。これは「すべてをありのままに受け入れる」悟りの境地をある意味示しているのです。

大切なことは

 タモリさんは、赤塚不二夫さんの家に居候して、芸能界にデビューしました。

 そんな縁もあって、赤塚さんの葬儀の弔辞をよみましたが、その際に「これでいいのだ」に表される境地について言及しています。ちなみに、この時のタモリさんが手にしていたのは白紙の原稿。「勧進帳」を地で行く、見事なパフォーマンスでした。

 あなたの考えはすべての出来事、存在をあるがままに前向きに肯定し、受け入れることです。それによって人間は、重苦しい陰の世界から解放され、軽やかになり、また、時間は前後関係を断ち放たれて、その時、その場が異様に明るく感じられます。この考えをあなたは見事に一言で言い表しています。すなわち、「これでいいのだ」と。

 さすがタモリさん。「これでいいのだ」という境地について、実に見事に説明しています。すべての事態をあるがままに受け入れることによって、「過去」や「未来」を離れた「現在」に意識がフォーカスされます。そのことによって、いまの瞬間が輝きを帯び、過去や未来に起因する無駄な悩みがなくなって、目の前にある幸せを感じられるようになります。

 「これでいいのだ」――これが天才漫画家・赤塚不二夫さんの人生を貫く最も重要な価値観だったのでしょう。わたしたちもこのような価値観をぜひ持ちたいものです。

(解説/浄土真宗本願寺派僧侶 江田智昭)