100業種・5000件以上のクレームを解決し、NHK「ニュースウオッチ9」、日本テレビ系「news every.」などでも引っ張りだこの株式会社エンゴシステム代表取締役の援川聡氏。近年増え続けるモンスタークレーマーの「終わりなき要求」を断ち切る技術を余すところなく公開した新刊『対面・電話・メールまで クレーム対応「完全撃退」マニュアル』に需要が殺到し、発売即、続々と異例の大重版が決まっている。
本記事では、瑕疵がないのに、クレーマーの強引な要求を受け入れて実損を出してしまった事例と、クレーム対応における「録音・記録」の考え方を特別掲載する。(構成:今野良介)

とんでもない親子からのクレーム

「ネットにさらすぞ」の脅し文句に対しては、「困りました」「苦しいです」「怖いです」の「K言葉」でかわすのが基本です(詳しくは『クレーム対応「完全撃退」マニュアル』をご参照ください)。

ただし、音声や画像、さらに動画も投稿できるスマホの普及が、クレーム担当者に大きな心理的脅威を与え、「放置」に二の足を踏む理由のひとつになっています。

そこで本記事では、クレーム対応における「録音・録画」の考え方と対処法に絞ってお伝えします。

まず、1つの事例をご覧ください。

--------食品系商社の事例---------

外国産食品を輸入する商社系企業に異物混入のクレームが入った。70代の女性が「ドライフルーツを食べていたら、プラスチックのようなものが出てきた」と苦情を申し立てているという。

メーカーの担当者が女性宅を訪問すると、女性の長男が応対した。

「写真を撮ったから覚悟してください。きちんと調べて、報告してください」

長男は、そう言ってスマホに収められた画像を担当者に見せた。担当者は顔をひきつらせながら、お詫びするとともに検体として製品を持ち帰った。

早速、分析機関で検査をすると、混入した異物は歯の詰め物(コンポジットレジン)が歯から脱落したものであることがわかった。

担当者は、自社の瑕疵でないことを確信し、その報告書を持って女性宅を再訪問した。

ところが、報告書を見た女性の口から出たのは、「私のものじゃない」という意外な言葉だった。長男も「作業員の歯を調べてくれ」と続けて言った。

担当者は当惑したが、この申し入れを断れなかった。風評が広まることを恐れたからだ。そこで、作業員全員を歯科に行かせることにした。

結局、作業員の歯ではなかったことがほぼ立証され、長男も納得して一件落着した。しかし、それまでに3か月余りと受診費用を含めて数十万円かかった。

(了)

「二人組」のクレーマーは悩ましい

大企業では、一時期に比べて、ネット被害の件数は減少傾向にあります。それは、企業側がネットモンスターへの対策を進めてきたからです。かつてのようにクレーマーとの会話の中で不用意な発言をして、それをネットで流されるという「失態」は少なくなりました。

ところがその一方で、生理的な嫌悪感を抱かせる画像や動画を目にすることが多くなっています。食品に混入した昆虫などは、その最たるものでしょう。その真偽とは別に、イメージ先行で企業に大きな打撃を与える危険性は、以前にも増して大きくなっていると言わざるをえません。

電話を録音するこれだけのメリット

しかし、視点を変えれば、企業・団体がスマホ社会を味方につけることができます。