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吉田麻里/(シャープ IoT HE事業本部スモールアプライアンス事業部商品企画部主任) Photo by Ryosuke Shimizu

 まったく新しいジャンルの製品にもかかわらず、発売から3年で10万台を出荷した調理家電がある。シャープの「ヘルシオ ホットクック」だ。

 ホットクックは食材と調味料さえ入れれば、後は放っておくだけで、料理ができる鍋だ。ガスなどの燃料ではなく、電気を利用する。

 大きな特徴は「まぜ技ユニット」というかき混ぜる棒のようなものが装備されていること。この棒が食材に当たった際の負荷で、どれくらい火が通っているかを判断し、きめ細かに温度を調節して仕上げる。その結果、焦げ付かないだけではなく、食材に含まれる水分のみで調理でき、おいしさが凝縮される。

 さらに、火を使用しないため、キッチンを離れることができるから、忙しい家庭では重宝する。何しろ、朝に仕込んで帰宅時に出来上がったばかりの料理を食べられる予約機能もあるのだ。

 このように今までにはない特徴があるのだが、裏を返せば、それは「どのような製品か購入前には実感を得にくい」というハンディを負っているともいえる。

 ところが、後述するように購入者の多くが高い頻度で利用し、手放せなくなるという。そうした利用者がインターネットでレビューを書いたり、知り合いに口コミで薦めたりすることで、評判がじんわりと広がっていった。その結果、コマーシャルをほぼしないまま、10万台のヒットとなったのだ。

肉じゃがから始まり
数百種類を試作

 ホットクックの開発が始まった2013年は、和食がユネスコの無形文化遺産に登録された年だ。

 しかし、和食は忙しい家庭では敬遠されがちだ。特に煮物などは長時間火にかける必要があり、たまにやって、鍋の底が焦げ付いたりしたときのショックは大きい。