記者殺害と株式市場は
意外なところでつながっている
10月に入って、一時、米国を中心に世界の主要株式市場が軒並み下落基調になった局面がある。特に、IT先端銘柄が多く組み入れられている、米ナスダック総合指数の下落率は大きかった。IT先端企業の代表格として、多くの投資家が高成長を期待して保有してきたGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)の下落は顕著だった。
その背景には、トルコ・イスタンブールにあるサウジアラビア総領事館で、サウジアラビアの著名記者であるジャマル・カショギ氏が殺害されたことがある。記者殺害と株式市場、一見結びつかない2つが、実は意外なところでつながっている。
元々、サウジアラビアは、将来の“脱原油経済”を目指して、先端のIT技術企業などへの出資を積極的に行っている。多額の投資資金が米国のシリコンバレーにあるIT先端企業に向かっているといわれてきた。
ところが、今回の著名記者殺害にサウジアラビアの要人が関与しているとの見方があり、米国をはじめ世界の主要国で反サウジアラビアの世論が盛り上がった。そうした状況下、同国が、従来のように米IT企業への投資を続けることができるか、先行きに不透明感が出た。
そうなると、サウジアラビアのリスクはIT関連企業の株価を下押しする一因になる。それに加えて、英国で、米国の大手IT企業を狙い撃ちする税の導入が検討されるなどの逆風が吹き始めている。
今後、カショギ氏の殺害疑惑がどう解決されていくか、今のところ落としどころが見えない。それは、米国の中東政策にとっても大きな問題だ。著名記者殺害事件は、今後の世界経済を考える上で無視できないリスク要因だろう。