「簡易個室」の公認が激変させる
人生100年時代のイメージ
生活保護に関する現在進行形の最大の課題は、2018年10月1日に施行されたばかりの改正生活保護法、そして生活保護世帯の70%に対する保護費引き下げだろう。それらの影響が少しずつ現れ始めたばかりの11月5日、厚労省は「社会福祉住居施設及び生活保護受給者の日常生活支援の在り方に関する検討会」を開始した。「社会福祉住居施設」とは、いわゆる無料低額宿泊所のことだ。厚労省の資料には、「社会福祉住居施設(無料低額宿泊所)」と表記されている。無料低額宿泊所は、住居がない人々の一時的な住居だったのだが、近年は事実上の「定住」に近い使用形態が多い。
検討会は、この現実を踏まえて開催されているのだが、特に注目されていない。目的は、今年6月に再改正された生活保護法や関連法案を施行するための厚労省令・施行規則・通知・通達などを定めることである。一見、法改正のような大きな影響力はなさそうだ。
そのせいか、傍聴席には空席が目立った。メディア関係者の姿が若干は見られたものの、11月8日現在、全く報道されていない。しかし、この検討会は、日本社会の将来に大きな火種を仕込むかもしれない。その火種とは、国交省が定めた日本の「住」の最低基準以下の「住」の公認だ。具体的には、薄い間仕切り壁で隣のスペースと不完全にしか区切られていない「簡易個室」が、無料低額宿泊所の「個室」として公認されてしまう可能性があるのだ。
無料低額宿泊所は、福祉事務所の紹介によって入所することの多い施設だ。本人の同意は必要とされるが、雪の日に無一文で福祉事務所を訪れて、職員に「そこがイヤなら、今晩、寝泊まりできるところはありませんよ」と言われたら、同意するしかないだろう。そのような成り行きで、無料低額宿泊所の「簡易個室」という名の「なんちゃって個室」で生活保護を利用し始めたら、転居できないまま、結局はそこが「終の棲家」になってしまうかもしれない。すると、「人生100年時代」のイメージは、全く異なるものになるはずだ。
私は正直なところ、大きな危機感を抱いている。