本記事で紹介している厚労省の検討会の対象は、「社会福祉住居施設(無料低額宿泊所)」だが、現在のところ、スプリンクラーは議題として浮上していない。しかし、焦点の1つであることは間違いない。高齢者施設・障害者施設で起こったこと、起こり得ることは、無料低額宿泊所でも起こり得る。

貧困ビジネスを排除しようとして
良質な暮らしが排除される不安

 無料低額宿泊所は、本来、一時的な宿泊施設だったが、他に行き場がない人々の定住の場や「終の棲家」になっている現実がある。いずれにしても、高齢期を迎えた人々、あるいは日本の「普通」から漏れてしまった人々の相当数は、無料低額宿泊所を定住の場とせざるを得ない。この現実は、もはや認めるしかないかもしれない。

「貧」と「困」を抱えた人々の自己決定と尊厳を最後の日までサポートしている良心的な施設を応援する制度の整備、「貧困ビジネス」を退場させる制度の整備は、自分や家族が「もしかしたらお世話になるかも」という観点からも、歓迎したい。

 この6月、生活保護法の再改正と同時に改正された関連法案は、無料低額宿泊所に対する規制強化と、単独での居住が困難な人々への日常生活支援を「良質な」無料低額宿泊所で行うことを規定した。「法律がやっと現実に追いついた」とも「それしかなかった状況が解決されないまま、既成事実がついに公認されてしまった」とも言える。

 では、「良質な」無料低額宿泊所とは何だろうか。2015年のガイドラインで、面積や設備による基準は「原則として個室」「面積は4畳半以上(特別な事情がある場合には3畳)」と定められている。では、このガイドライン以前に設置された、2.9畳相当の個室と、良質な人的サービスを提供している無料低額宿泊所は、「良質」ではなく劣悪なのだろうか。

 検討会では、構成員の1人である滝脇憲氏(NPO法人自立支援センターふるさとの会 常務理事)が、山谷地域を含む東京都台東区で、1990年以来(NPO法人化は1999年)ずっと「行政とともに考えながらつくってきた」施設やサービスの数々を紹介した。また、2009年の「たまゆら」火災で暮らしの場を失った高齢者も受け入れていること、認知症の入居者が地域で草取りなどの役割を担いつつ住民との交流を深めてきたエピソードについても述べた。そして「面積基準は大切ですけど、長年のその人の暮らしや積み上げより尊いのでしょうか」と問題提起した。