疲れた脳は、早く疲労から
逃げたいために糖質を欲しがる

体と心の疲れが消えていく「滋養食」 藤田紘一郎
本コラム著者・藤田紘一郎先生の新刊が発売

 人類の長い進化の歴史では、飢餓という危機と隣り合わせの時代がとても長く続いていました。そこで、人の細胞は、この危機を乗り越えるため、糖質が少ない状態でも、脂質やたんぱく質の元であるアミノ酸を燃焼させてエネルギーを産生するしくみを獲得したのです。

 体内で糖質が枯渇した状態になると、肝臓を構成する肝細胞の中で脂肪酸が燃焼され、「ケトン体(アセト酢酸とβ-ヒドロキシン)」という物質ができます。このケトン体は、細胞膜や血液脳関門を通過し、ミトコンドリアエンジンで代謝されることで、脳や多くの臓器のエネルギー源になるのです。

「疲れたときに、甘いものを食べると頭がよく働く」――とよくいわれます。

 たしかに、エネルギー供給のスピードを考えれば間違ってはいません。糖質を燃料にする解糖エンジンは瞬発力が魅力ですから。

 即座にエネルギーの供給を受けることができれば、脳は疲労を忘れ、元気づくことができます。疲れた脳は、早く疲労から逃れたいがゆえに、炭水化物や砂糖など、糖質が豊富なものを欲しがるのです。ただ、ここに大きな落とし穴があります。

 糖質を過剰に摂取すれば、肥満や糖尿病のリスクが高まります。肥満になれば、体内の活性酸素の量が爆発的に増えてしまいます。ですから、脳がいくら炭水化物や砂糖を欲しがっても、食べすぎてはいけないのです。

「炭水化物は毎食欠かせない」

「甘いものが食べたい」

 こうした感情こそ、脳が糖質を欲している証拠です。

 ここ20~30年の私たちの食生活を見ていると、脳がいち早く満足するような糖質たっぷりの食べ物ばかり口にしているように思えます。しかし、それは脳内の活性酸素量をいたずらに増やし、脳細胞の老化を引き起こす原因になります。

 長期的な目で見れば、脳の疲労回復に甘いものを食べることは、むしろ脳を疲れやすくしている――といえるのです。