初の地下鉄直通特急が
クリアした幾つもの課題

 鉄道車両は路線ごとに運用可能なサイズの上限が決まっている。地下鉄に直通するためには、通勤車両であれ特急車両であれ、決められた長さ、幅、高さを超えてはいけない。といっても、トンネル内を走るからといって特別に小型の車両というわけではない。例えば小田急本線を走る展望席を備えたロマンスカー50000形「VSE」と地下鉄対応のMSEの車体のサイズを比較すると、MSEの方が長さ、幅、高さともに大きいくらいだ。

 技術的には、地下鉄のダイヤに対応するための高い加速性能やブレーキ性能を確保するとともに、事故や火災の被害拡大を防ぐための高度な保安装置、不燃性・難燃性素材の使用、避難設備の設置など、厳しい条件が求められてきた。しかし最近は全ての鉄道車両が性能向上し、安全基準も厳しくなったことで、車両構造には大きな違いがなくなっている。

  むしろ、特急列車を受け入れる地下鉄側の準備の方が大変だったかもしれない。MSEの場合、それまでメトロは有料特急を運行したことがなかったので、特急料金を新設し、発券、払い戻しなど営業制度を新たに整備した。さらに、特急券売機の設置や車内検札要員の確保、車内の清掃や整備の体制も準備する必要があった。

 制度だけでなく運行にも工夫が必要だ。退避駅がない地下鉄線内では追い抜きができないので、前後を走る各駅停車に追い付かず、追い付かれず走らないといけない。他方、通常の地下鉄の停車時間は20〜30秒程度だが、ドアの数が少なく、乗客の荷物が多い特急列車では、乗降するためにもう少し長い時間が必要になる。そこで、駅を通過して稼いだ時間で、停車駅では通常の列車よりも長く停車することで全体のバランスをとっている。

ただこれらの困難は一度乗り越えてしまえば済む話。MSEに次ぐ地下鉄直通特急誕生の動きも始まっているようだ。