実際、現在でも中小企業基盤整備機構から、VCやPEにシードマネーを出す仕組みがあるので、それを一気に拡充すればよいのではないか。あるいは、米国がかつてそうであったように、国内の年金基金等が母国のVCやPEに投資しやすい環境を整備し、国内の資金がVCやPEを通して資本市場の規律の下で産業の活性化に使われるよう資金循環を改善するのが筋だろう。

 日本にとって有為な人材が官の縛りのないところで十分に活躍できるようにすることこそが国益である。そういう人材が運営する民間のファンドに、成功報酬ベースで世界から有能な人材が集積するのがあるべき姿だ。

 官民ファンドは、もともと時限性のある組織であった。また、政府系金融機関も本来、もっと早く民営化されるはずだった。それがいつの間にかなし崩し的に延長され続けているのが現状だ。

 官民ファンドの原資は冒頭に述べたように実質的に税金であるだけに、官民ファンドが資本市場の規律を持つことは期待できない。一般的に、リスクに見合ったリターン(収益)を追求することによって、投資家の利益を最大化するというのがファンドとして維持すべき資本市場の規律の根幹である(投資家保護)。民間のVCやPEは皆、それを順守して投資家の信任を得ながら産業の新陳代謝に一役買っているのだ。

 官僚が考える理想的な企業・産業像というものが全部間違っているとは思わないが、産業の新陳代謝は、資本市場の規律に基づいて自然に行われるのが本来の姿であることを肝に銘じたい。

 今回の高額報酬に関する報道の後、11月7日の定例記者会見で、世耕経済産業大臣は、「機構の役員には、やはり国際的に競争力を持つ産業を育成するというミッションを果たすためには、グローバルな視点を持つ優秀な人材を採用することが不可欠だ」と述べ、高額報酬に理解を示したという。

 しかし本当にJICの役員は優秀な資産運用業務のプロなのだろうか。仮にそうだとしても、有能な人材が運営する民間のファンドを育成せず、逆に政府部門に人材を呼び込み、閉じ込めるような発想では日本の将来は危うい。