欧州の経済問題をめぐっては、フランスやギリシャ、ドイツで反緊縮政策派が各種選挙で勝利した。

 昨年10月20日付け本コラム「ギリシャはデフォルト(債務不履行)常習国 歴史と最適通貨圏理論で解く問題の本質」で指摘した通り、欧州からはギリシャのユーロ離脱論も増えてきた。ギリシャのユーロ離脱を含め、スペインやイタリアの経済問題、ECB(欧州中央銀行)の動向など、今後の欧州の政治、経済のシナリオはどうなるのだろうか。ユーロの動向が日本経済に与える影響はどうなのか。

ユーロという共通通貨は
「現代版金本位制」

 日本のマスコミは、ユーロ危機を通貨が同じであるにもかかわらず、財政は統一されていないことをその原因と見る向きが多い。だから、財政を統一せよ、しかも財政規律をユーロ各国が守れという論調だ。しかし、欧州の国民の動きはこれとまったく逆方向だが、経済理論からみて正しい方向だ。

 そもそも、ノーベル賞受賞者でもあるアメリカの経済学者ジョセフ・スティグリッツは、欧州危機の時の緊縮政策は「自殺」への処方箋だといっている。同じくノーベル賞受賞者のポール・クルーグマンも、緊縮政策は「狂気の沙汰」であるとして、はっきりとおかしいと言っている。ほとんどのエコノミストは経済危機における緊縮政策は、間違っている点で同意するだろう。

 振り返ってユーロ危機の本質を考えると、それはユーロという共通通貨圏となったために、各国の金融政策の自由がなくなったことにある。各国でユーロを共通通貨として用いるということは、各国が金という共通通貨を用いる金本位制に似ており、「現代版金本位制」といえる。