今年4月、信託銀行業界大手の三菱UFJ信託銀行は、法人融資事業をグループ内の商業銀行に移管した。その穴埋めとさらなる収益力改善に向けて、3000億円強の巨額買収を仕掛けた。 (「週刊ダイヤモンド」編集部 田上貴大)
「事業本部の中で最も規模は小さいが、手数料収入が主軸のために銀行の自己資本による制約を受けない。また世界中で富を蓄積する機運が高まっており、今後も成長し続ける分野だ。大きな柱に育てたい」
11月13日に行われた2018年度中間決算発表の席上で、三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)の平野信行社長は、顧客からの預かり資産を運用・管理する受託財産事業の将来性についてこう力説した。
その2週間前の10月31日、同社はオーストラリア大手、コモンウェルス銀行傘下の資産運用会社を買収すると発表。総額3280億円に上る大型買収で、まさに平野社長が言う「受託財産事業のグローバル展開に向けて、意味が大きい第一歩」を踏み出した。
この受託財産事業を一手に引き受けるのが、グループ傘下の三菱UFJ信託銀行。この買収も同行からの出資となる。買収に至った背景には、信託銀行の身に起きたある大変革がある。順を追って説明していこう。
まず信託銀行とは、個人と法人に向けた貸し出しなど銀行業務を行いつつ、遺言信託や受託財産の運用など信託業務を本業とする銀行のこと。貸し出し業務の利益は「資金利益」、信託財産の運用成果に対する報酬は「信託報酬」または「役務取引等利益」といった形で収益源が分類される。
図1の通り、三菱UFJ信託銀は過去3期で各年約1100億~1700億円規模の純利益を上げている。FGへの利益貢献という点では、三菱UFJ銀行に次ぐ2番手の位置付けだ。
ちなみにメガバンクグループ傘下の信託銀行の中では、三菱UFJ信託銀は最大手。専業信託銀行グループ傘下にある三井住友信託銀行とは、業界最大手の座を争っている状況だ(図2)。