立ってではなく座ってあやす夫
すぐに楽をしようとしないで!
Cさん(29歳)の子どもは無事生後1年を迎えた。Cさんは子育てにおいて後輩である夫に対して常々思っていることがある。
「すぐ楽をしようとするんです。うちの子がぐずって寝ないときは、立って揺らしてあやすのが一番効果的なんですが、座って膝の上に乗せてそれでゆらゆらしたりする。結局さらにぐずりが激しくなって私が交代することになる。
夫の言い分は『こちらも疲れてしまうから、なるべく楽な方法を模索している。それまでのやり方に縛られないでベターを探した方がいいではないか。それこそが2人で子育てをするメリットともいえるのではないか』ということで、なんなら私と対立する勢いなんですが、こちらは今までいろいろと散々試してきてこの方法に落ち着いているので、『そんなこと言われても。ただ楽しようとしているだけでしょ』と思う」(Cさん)
夫の主張は「より楽な方法を模索している」というものだが、より経験を積んでいるCさんを納得させるには至らない。Cさんから見れば、夫はかつて自分が歩んだはるか後方の道を同じように歩んでいるところであり、「なぜノウハウを積んでいる私の言うことに従おうとしないのか」と思っている。夫の主張が、ただの楽をしたいがための言い訳に聞こえてしまうのである。
新卒で入社した社員が大きな夢を語るばかりで、目下要求されているビジネスマナーの取得に関しては「あー。そういうのは必要ないんでパスで。それより新商品考えたんで聞いてください」と言ってしまうようなケースがよくあるが、Cさんの目には夫がそんなふうに映っているのかもしれない。
しかし子育ては、限られた空間で子どもと相対して長時間を過ごすため視野が狭くなりがちである。Cさんは、夫より子どもと長い時間を過ごしてきたからこそ、そんな落とし穴にはまりかけているのかもしれない。
後から参加した夫が、Cさんには考えつかない視点を提供してくれる可能性もある。夫がCさんを納得させられないのは、経験の厚みが足りていないのもあろうが、何より「楽しようとしている」と見られるスタイルがうまくなさそうである。
子どもと笑顔で向き合うために自分の負担を減らすアプローチを模索することは必要だが、それが「子のため」でなく「自分のため」のように受け取られてしまっているのが、夫のミスといえばミスである。「大前提として子どものためなんですよ」ということが伝わっていれば、Cさんの感じ方も変わっていたかもしれない。