デモは社会変革の原動力

 市民による政治参加手法の1つであるデモや集会は、日本を含め、多くの民主主義国家で国民に与えられる権利であり公器です。そして、社会を変えるための原動力です。

 特にフランスでは、こうした考えが、大統領から子どもまで絶対的な価値観として共有されています。

 その背景には、歴史的な要因があります。今から230年前、それまで800年以上も続いた王政に、市民が反旗を翻し、街に繰り出し闘いました。フランス革命です。その結果、市民は、国王を処刑するとともに、自由・平等・博愛・人権・国民主権を勝ちとりました。それ以降、この国では、歴史の要所要所で、市民の声の大きなうねりが社会の変革に影響を与えてきたのです。

 また文化的な要因もあります。「カフェのカウンターは、庶民の国会」とバルザックの言葉が象徴するカフェ文化です。これは、国民誰もが、社会的立場(職業、階層、親子、人種…)を越えて、街角、レストラン、家庭などで政治を語る、そして主張を交わすことで社会が進化するという文化的価値観です。

 こうした歴史と文化が根づくフランスの人々は、デモへの参加に罪悪感をもちません。また、社会のルールに従い公的秩序を守る限りにおいて、デモ参加者を、特別視したり、蔑視したりすることはありません。逆に多くの場合、デモ行動そのものに寛容で理解を示します。

デモは日常茶飯事

 こうした歴史と文化から、フランスでは特定の主義主張をもつ人々がデモや集会をする光景は、年がら年中、また全国津々浦々で見られます。参加者は、大統領を含め政治家、警察、弁護士、農民、LGBT、医者、パイロット、バス運転手、鉄道員、教員、中高生、大学生などの社会的立場、階層、職業、年齢もさまざまな人々です。

 また、その目的もさまざまです。政府の政策や政治手続き等に対する反政府系デモ、社会的脅威に対し、問題提起や反発をする反社会系デモ(反テロ、反差別、反パワハラ等)、ある思想や価値観への理解や賛同を促す宣伝系デモ(LGBT、パックス〈同性または異性の成人2名の共同生活のための契約〉、喫煙権等)、特定の喜びや悲しみを共有しようとする共感型デモ(サッカーワールドカップ優勝、国民的英雄の死など)などです。

 これに加え、趣旨の異なる複数のデモが、同時期に並行してあることも見慣れた光景です。今回も、黄色のベストとは別に、高校生による教育改革反対デモ、市民による気象変動対策推進のためのデモ等が同時に行われています。