「これ、なかなかインスタ映えするでしょ」

こんなコメント付きで、異物混入の「証拠写真」として投稿されたのである。

しかし、そこに何が映っているのかは、はっきりしない。単なる嫌がらせなのか、それとも正当なクレームなのか、わからない。

「もし、こんな画像がネットで拡散したら……」オーナーシェフは、投稿者の卑劣なやり方に憤りながらも、大きな不安を抱えることになった。

(了)

異物混入や接客態度によるトラブルなど、企業の不祥事をSNS上で広めようとする「ネット告発」が増えています。それが拡散されれば、「ネット炎上」となり、企業は甚大なダメージを受けます。

一般的に、こうしたクレームはツイッターなどに投稿され、「拡散希望」という文言を添えていることが多いようです。「ビラをまくぞ!」は、かつての悪質クレーマーがよくつかった脅し文句ですが、その「ビラまき」と同じようなものです。

ただ、ビラまきとは異なり、ワンクリックで、場合によっては数百万人に拡散させることができるので、脅威の大きさは比べものになりません。しかも、企業が「誰でもやろうと思えば、簡単にできる」ネット告発をすべて監視することは、ほぼ不可能です。

しかし、ネットでの拡散や炎上に過敏になるのは賢明ではありません。

対面や電話での場合と同様に、クレーム対応の手順をきちんと踏めば、ほとんどは収束するのです。「風評が流れるリスク」を心配する向きも多いでしょうが、やみくもに対抗策を講じようとすると、クレーム担当者のストレスはさらに増大します。

「ネット社会」を味方につける

むしろ、ネット炎上を防ぐ方法としては、ネット上に「ファン」をつくっておくことを検討すべきでしょう。なぜなら、彼らが炎上を「消火」をしてくれることがあるからです。

たとえば、異物混入を訴えるネット情報(デマ)が流れたとき、「黒く見えるのは、黒胡椒。それが塊になったものでしょう。成分表示を見ればわかる」などという書き込みが期待できるかもしれません。

事実、カップ麺にゴキブリが混入した事件では、企業を擁護するネット上の声もたくさんありました。結局、ネット炎上を消火するまでには至りませんでしたが、企業ブランドの回復には一役買っています。

では、ネット上にファンをつくるには、どうすればいいのでしょうか?

もちろん、商品やサービスの品質を向上させることが基本ですが、そのうえで、SNSを通じた消費者との「対話」を積極的にすることです。たとえば、ツイッターやフェイスブックなどで公式アカウントをもち、消費者との直接的なコミュニケーションを図ってもいいでしょう。

すでに多くの企業が顧客満足向上の一環として始めていますが、ネット上で顧客との良好な関係を築くことは、クレーム対策としても有効になる場合があるのです。

かつて、クレーマーは「録音しますよ」というセリフで担当者に脅しをかけることがありましたが、いまでは「録音する」ことはクレーム担当者の必須テクニックです。また、スマホで動画を撮影することが、モンスタークレーマーへの抑止力になることもあります。

『クレーム対応「完全撃退」マニュアル』では、最新のクレーム事例を40以上紹介しながら、対面・メール・電話あらゆる場面における正しい対応法、ネット炎上を鎮火させる方法、高齢化に伴い増加している「シルバーモンスター」の実態と対策など、クレーマーの終わりなき要求を断ち切る23の技術を余すところなく紹介しています。

ぜひ、現場で使い倒していただき、万全の危機管理体制を整えた上で「顧客満足」を追求してください。

(参考記事)

12歳のネットクレーマーと<br />異物混入の「インスタ映え」

「半殺しだよ」→「怖いです」
「SNSで拡散するぞ」→「困りましたね」
究極のクレーム対応“K言葉”の活用術