風疹の予防接種をしないのは
ある意味で「公害」

 風疹の予防接種によって完璧な免疫ができるのであれば、妊娠の可能性のある女性全員が予防接種を受ければいいし、仮に受けなかった女性が妊娠中に風疹に感染しても、それは自己責任と呼べるのかもしれない。問題は、予防接種を2回受けても、免疫ができない人がいるということだ。

 そうなると、筆者のような男性も予防注射を受ける必要が出てくる。筆者が風疹にかかり、不幸にも免疫ができていない女性が筆者から感染してしまうかもしれないからだ。これは、一種の「公害問題」といえる。

 公害というのは、経済学的には「外部不経済」と呼ばれるもので、自分が利益を追求することで他人に迷惑がかかること。工場は操業して利益を得ているが、それによって周辺住民に騒音などの迷惑をかけているといったものだ。

 男性にとっては、風疹の予防接種を打つインセンティブは大きくない。手間も費用もかかるし、副作用のリスクもある。一方で、仮に風疹にかかったとしても、さほど症状は重くないだろう。従って、法令で義務化され、かつ接種費用を政府(国あるいは地方自治体、以下同様)が支払ってくれない限り、接種しない人が多いはずだ。

 そうなると、女性の多くは予防接種をするが、男性の多くは予防接種を受けないことになるため、男性の間で毎年のように風疹が流行する可能性が高まる。問題は、上記のように、予防接種を受けても運悪く免疫ができなかった女性が、妊娠中にかかってしまう可能性が高まってしまうことだ。

 男性は、自分のことだけを考えると、予防接種を受けないという選択肢が正しいが、それによって運の悪い女性に被害を生じさせてしまうとすれば、それは「公害」といえるだろう。

 そうであれば、公害企業には「公害を出してはいけない」という決まりを課すべきで、それが「男性も予防接種を受けて、風疹にかからないように」として義務になっているのだ。

 では、なぜ風疹は予防接種が義務なのに、インフルエンザは違うのか。筆者は医学に詳しくないが、理由の1つは「インフルエンザは誰でもかかると自分が苦しいから、予防接種を受けるインセンティブを持っている」というところが風疹との大きな違いだろう。