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日立に電力事業を売却する
ABBのトップが語る企業改革への挑戦

末岡洋子
2018年12月27日
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顧客主導になるために
EBITDAに加えNPSも重視

 そのような組織を作りながら、現在進めていることはABBという企業を「ひっくり返すこと」だ。「ラボで作業しているR&Dスタッフはこれまで、アイデアを生み出して発明し、市場にローンチし、顧客が受け入れなければ“自分たちは常に正しい。顧客は理解できなかった”という姿勢だった」(Spiesshofer氏)。それをひっくり返すことにしたという。

 現在ABBでは、資本やリソースを配分する際は「顧客主導、市場主導」で進めている。Spiesshofer氏は、「これまでとは正反対の考え方であり、誇りを持ってやってきた研究者たちのエンジニア文化を変えるのは簡単ではない。ABBの企業活動全ては顧客中心にすると伝えている」と述べる。企業を運営する際に重視する指標も、それまではEBITDA(利払い・税引・減価償却前利益)一辺倒だったが、顧客の継続利用意向を図るNet Promoter Score(NPS)も取り入れているそうだ。

 将来は、AI分野でソリューションベースのビジネスモデルを展開する。それに向けて、1)専門知識の構築、2)ソフトウェアとハードウェアを合わせたサイバーフィジカルな“レゴボックス”、3)アプリケーションエンジニアリング、の3つの分野に取り組んでいるという。

 また、新しいABBにとって“良き市民”であることはさらに重要だという。ABBは再生可能エネルギーなどの取り組みを進めてきたが、2018年には石油など化石燃料を使わない電気自動車による「Formula E」のタイトルスポンサーになった。「消費を止めることは不可能だし非現実的だ。だが効率化は可能だし、技術を使って消費のパターンを変えることも可能だ」とSpiesshofer氏。EV充電など“eモビリティ”と言われる分野への参入については、自分が最も恐れる”批評家”である子供から、「父親の仕事が世界を良くすることにつながる、と喜んでもらえた」と報告した。

 変化する産業界に先んじるための新しい技術とビジネスモデルの構築、企業文化とリーダーシップの変化、そして国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」への協調へと、ABBの変革は続いている。

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末岡洋子

すえおか・ようこ/フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている。

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