【おとなの漫画評vol.12】
『BLUE GIANT』
全10巻 2013年~2017年
『BLUE GIANT SUPREME』
既刊6巻 2019年1月現在
石塚真一 小学館
漫画『岳』の著者が描く
ジャズ演奏家のサクセス・ストーリー
『岳』(全18巻、小学館、2003~2012年)が石塚真一のデビュー作だった。山岳救助のボランティアを主人公にした作品で、不定期連載を含めれば9年、本連載では7年間も「ビッグコミックオリジナル」で連載していた。
『岳』のあと、翌2013年から「ビッグコミック」で連載が始まり、2019年現在も続いている長編が『BLUE GIANT』とその続編の『BLUE GIANT SUPREME』だ。山岳物語とはがらりと変わり、テーマはジャズで身を立てる青年のサクセス・ストーリーである。
物語が終わっていないのにどうしてサクセス・ストーリーだと言えるのかというと、単行本では各巻の巻末のおまけとして「後年の回顧談」が付いており、成功した大音楽家(主人公)の駆け出し時代を回想しているからである。
『BLUE GIANT』は仙台の高校生、宮本大(みやもと・だい)がテナーサックスでプロのジャズ演奏家を目指す物語である。最初から自己流でバリバリ、モリモリと土手、橋、公園で吹いている。絵を見ると大音量だ。橋で練習していたエピソードのあるアメリカのテナーサックスの巨人(Giant)、ソニー・ロリンズ(1930~)の音が頭の中に出てくる。
宮本少年は1人で東京へ出て、1人で激しく禁欲的に練習している。非常に有能なピアノ弾きの少年、初心者のドラムスの少年と出会い、トリオを組む。この若いピアニストが事故で出演できなくなったライブでは、なんとテナーとドラムスだけで演奏した。