2010年に経営破綻したJAL。当時、マスコミや業界人の多くは二次破綻を懸念したが、多くの予想に反して、JALはスピード再建を遂げ、高い利益率を誇るエアラインに生まれ変わった。成功の秘訣はどこにあったのか、稲盛和夫氏の側近として、JAL再建に携わった大田嘉仁氏に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集部 津本朋子)

作文が上手なのが出世の条件…
破綻前の驚くべきダメ社風

――当時、私も含めて多くのマスコミや業界人は、JALの二次破綻を懸念していました。破綻企業は、経営再建計画をつくって赤字事業を削るなどのリストラを断行します。しかし、蘇る企業は少ない。特に、社員の意識改革はどのケースでも難問として立ちはだかります。

稲盛和夫氏の側近としてJALに入社し、再生に尽力した大田嘉仁氏
おおた・よしひと/1954年鹿児島県生まれ、78年立命館大学卒業後、京セラ入社。90年米ジョージ・ワシントン大学ビジネススクール修了(MBA取得)。秘書室長、取締役執行役員常務などを経て、2010年JAL会長補佐・専務執行役員に就任(13年退任)。15年京セラコミュニケーションシステム代表取締役会長に就任、17年同顧問。18年に退任し、現在は稲盛財団監事、立命館大学評議員、日本産業推進機構特別顧問、鴻池運輸社外取締役などを務める Photo by Kazutoshi Sumitomo

 単にリストラをしても会社は再生しません。会社更生法を適用しても、実際に再生する会社はごくわずか、という話も聞いたことがあります。債務カットやリストラを行っても、社員の心が離反していればダメなんでしょう。優秀なコンサルタントが、いかに綺麗な再建プランを描いても、それを実行するのは、あくまでも現場の「人」ですから。

 私は京セラでずっと、稲盛(和夫)さんとともに働いてきまして、稲盛さんがJAL会長に就任した際、会長補佐として私もJALに入社しました。当初はまず、社員たちの声を聞くことに専念しました。すると、驚くような話をたくさん聞きました。業績が悪い原因は、「国が悪い」「マーケットが変化したから」「他社ががんばりすぎたから」…。こんな言い訳がいくらでも用意されていて、言い訳の作文が上手い人が出世の条件だというのです。

 エリート意識もすごかったですね。「俺は東大法学部を出て、どこだって行けたけれど、JALに入った。大学の同期はみんな、俺より高い給料をもらっているのに、こんな安い給料なのはおかしい。もっと給料を上げてほしい」とか。「管理職の賃金はカットせず、もっと現場の賃金を減らすのが常識でしょう」とおっしゃった人もいました。

――それを破綻までした後に、大田さんのような外部から来た人に堂々と言うのは驚きですが…。

 私も驚きました。しかし、話を聞いていく中でどうやら、この考え方をマズいとは思っていないようだということが、だんだんわかりました。「国だって一緒でしょう?経営ってそんなものです」と、当たり前のようにおっしゃる。先輩たちから、代々言い伝えられてきた価値観なんでしょう。自分たちで考え抜いた言葉とは思えません。

 しかし、これでは経営再建なんてできるわけがない。表現は悪いですが、特にリーダー、幹部の人たちの根性を叩き直すというようなことをしないとダメだと感じました。そこで、まずは意識改革を徹底してやろうと思ったわけです。