フューチャー・ウォー 米軍は戦争に勝てるのか?
『フューチャー・ウォー 米軍は戦争に勝てるのか?』
ロバート・H・ラティフ著
(新潮社/2000円)

「戦争というものは、軍人たちに任せておくには重要すぎる」とは、第1次世界大戦でフランスを勝利に導いた首相であるクレマンソーの言葉だ。本書は、今日の戦争が社会や政治から放置されている傾向によって、社会が重大な倫理問題に直面していると警告を鳴らす。

 著者は、米国軍人の家系に生まれた。予備役将校訓練部隊の奨学金を得て、大学で物理を学ぶ。さらに工学博士号を取得後、陸軍、空軍、国防総省への出向を経て、技術開発(兵器開発)に携わる。

 最後は、偵察衛星の運用を指揮し、空軍少将で退役した。その後も、コンサルタントや大学教員として新しい軍事技術がもたらす問題の研究・教育に従事するという、“未来の戦争”を語るには打って付けといえる経歴である。

 著者によると、米国社会で戦争についての現実感を持った議論がなされなくなってきたのには主として二つの原因がある。まず、技術がとてつもなく高度化し、その発展も速まっており、技術の軍事的・社会的・心理的な効果などを適切に判断できる人が少数となっている。次に、技術の発展で起こる多くの倫理問題は、いまだわれわれは検討をするだけの時間がない。例えば、核兵器や地雷などの伝統的な純軍用技術については、国際協約などの交渉もある。

 ところが、AI(人工知能)や生化学など軍民両用技術は、条約や協約の対象とはなっていないのである。ロボット兵士と人間兵士との協働作戦が進化すると、ロボットは自律的に動く場面が増えるであろう。そのとき、人間の判断力の意味は、どうなるのか?

 一方で、1975年3月に終結したベトナム戦争以降に徴兵制が停止された結果、軍隊は志願制になり、社会的に偏った層から構成されるようになった。加えて、実戦経験者も減っているため、社会の中に戦争の実態についての知識と意識がなくなっている。

 これらの要因により、軍隊と政治家を含む一般社会との間に溝ができ、共通理解が失われてきている。これは、現実離れした短絡的な強硬策や軍事介入への危険を高めている。ここでも、戦争行為への倫理的な考察が不十分となる。

 その他、現在と将来の戦争について広範な問題が軍隊側の経験から議論されており、社会からの関心と監視の必要性を主張する。

 日本においても、政治的な立場の左右を問わず、国民は軍事技術や防衛予算について興味を持ち、政治と自衛隊を監視する義務があるだろう。また、本書はビジネスで先端技術を使用する際の倫理についても考えさせられる。

(選・評/早稲田大学ビジネススクール教授 平野雅章)