人口構造を考えると、従来の「長時間労働が可能な人だけが働ける職場・社会」=「事情を抱えた人を切り捨てる職場」から、「様々な立場の人を働き手として受け入れる社会」に変える必要がある。働き手が不足するからだ。家族の看護に追われて休みがちな同僚に、冷ややかな言葉しかかけられない人は、速やかに職場から退場してもらっていい。

 でもこのような意識高い系のアプローチには限界がある。本書が優れているのは、長時間労働がもたらす個人のリスク、企業のリスクを具体的に挙げている点だ。これを読めば、その是正は、社会的な意義や上の指示でやるものではなく、自分のためにやるものであることがわかる。そして、時限消灯など、外科的な施策への「やらされ意識」が吹っ飛ぶ。

 本書の序盤では残業の歴史や実態にふれ、中盤で「麻痺」「集中」「感染」「遺伝」「残業代依存」など残業発生の要因を構造的に考察。終盤では上記のように残業抑制施策の負の側面を示し、いま何が必要か、具体的な解決策を提示する。その流れは、立て板に水。読んだら直ぐに、一歩を踏み出したくなる。この本はそんなパワーを持っている。