わが国では、1959年に国民年金法が制定され、1961年4月から保険料の徴収が開始されて、国民皆年金制度が確立された。同じ年に、国民健康保険制度も整備が進み、国民皆保険制度が完成されている。

 ところで、1961年の平均寿命は、男子が66.03歳、女子が70.79歳であった。すなわち年金や高齢者医療サービスの支給期間は平均して男子が6.03年、女子が10.79年と想定されていたのである。時が経ち、2009年の平均寿命は、男子が79.59歳、女子が86.44歳となった。平均寿命の伸長に伴い、年金支給・高齢者医療サービス支給期間は男子が19.59年、女子が26.44年まで、延びたのである。これは制度設計時の想定に比べて、実に男子が3.25倍、女子が2.45倍となる計算となる。

 また年代が1年ずれるが、1960年では勤労世代(15~64歳)11.25人が1人の高齢者(65歳以上)を支えていた。これが2010年には、2.85人が1人を支える構図へと大きく変化している。すなわち勤労世代の1人あたりの負担は、制度設計時の3.95倍まで増大したのである(しかも、前述したように、より長期間支え続けなければならない)。

 以上に述べた平均寿命の伸長と少子高齢化に伴う「人口構成の激変」こそが、わが国の社会保障改革の根底に横たわっている大きな構造問題である。

高齢者1人当たりの
社会保障給付費は237万円

 2011年10月に公表された国立社会保障・人口問題研究所の「2009年度社会保障給付費(概要)」によると、2009年度の社会保障給付費は、全体で99兆8507億円と、100兆円の大台にあと一歩と迫った。これは国民1人当たり78万3100円の給付となる。

 その内訳を見ると、高齢者関係給付費(年金保険給付費、高齢者医療給付費、老人福祉サービス給付費等)が全体の68.7%を占める68兆6422億円となっており、これを65歳以上人口で割ると、1人当たり236万6200円の給付となる。仮に高齢者がカップルで住んでいるとみなせば、1世帯当たり473万2400円の給付を受けている計算になる。