大阪万博、建設受注争奪戦にゼネコンが「全力投球」できない理由大阪湾に浮かぶ人工島の一つである夢洲。市街地ではないため、工事の制約が少なく、作業は進めやすい。マンション建設に強いディベロッパーは早速、夢洲周辺の用地取得に向けて情報収集を始めている Photo:PIXTA

 ゼネコン各社で「大阪万博」案件の受注争奪戦が繰り広げられている。昨年11月に2025年の国際博覧会(万博)開催地が大阪に決定、「まだ先の話だから」(ゼネコン幹部)と言いながら、水面下での戦いのゴングは決定前から鳴っていた。

 大阪府と市は、万博開催地となる夢洲(ゆめしま、大阪市此花区)にカジノを含む統合型リゾート施設(IR)を創るべく誘致を進めてきた。ゼネコン各社は一昨年から万博・IR施設等の受注獲得に向けて、専門組織を立ち上げていたのである。

 大手5社の中でも特に動きが早かったのが、関西地盤の竹中工務店だ。17年10月に万博推進室を設置し、翌年には夢洲MICE/IR推進室を設けた。大林組は昨年5月にプロジェクトチームを新設後、同12月に組織を拡大し、「大阪万博・IR室」を設置した。鹿島も7月に開発推進チームを設け、大成建設は今年1月に、大手では唯一、東京に「まちづくり・IRプロジェクト推進部」を置いた。

 夢洲は大阪中心部の梅田から約10km離れた埋め立て地。08年の夏季五輪の際の選手村を目指し、01年から誘致活動が行われていたが、その開催地は中国の北京に持っていかれた。このため夢洲は活用が進まず、「負の遺産」として残った。今はコンテナ埠頭や物流施設、太陽光発電パネルなどがあるのみで、約200ヘクタールの広大な空き地が広がっている。

 一度は散った“夢”を万博によって咲かそうといわけだ。