例えば、われわれの手のひらのスマートフォンは、当時の大型コンピューターよりはるかに優れた性能を持っているので、むしろ経済成長によってコンピューターを運ぶトラックのドライバーは不要になったのだ。

 しかし、高度成長が続かないという結論は正しかった。まず、高度成長期に農村から大量に都市に働きに出てきた若者が増え続けることはなかったし、むしろ長期では減少した。

 都会での仕事が増えるにつれ、給料を求めて農村の若者がほとんど都会へ行ってしまったので、農村には新しく都会へ出て行く若者が残っていなかったのだ。これと似たようなことは、中国でも起きているに違いない。「ルイスの転換点」と呼ばれる現象だ。

労働生産性の向上速度が緩和
産業構造も変化

 次に、労働生産性の向上速度が緩やかになってきた。手作業の洋服工場がミシンを買うと、労働生産性は一気に向上するが、すでにミシンを持っている工場が最新式のミシンに買い替えても労働生産性はそれほど上がらないからだ。

 もちろん、新しい産業や技術は絶え間なく進歩しているが、手作業から機械へと移った時ほどの生産性向上は、なかなか続くものではない。これも、日本と同様のことが中国で起きているのだろう。

 産業構造の変化も重要だ。「ペティ・クラークの法則」と呼ばれるものがあり、経済が発展するにつれて、どこの国でも第1次産業(農業など)から第2次産業(工業など)、第2次産業から第3次産業(サービス業など)へと主要産業が移り変わっていくのである。

 まずは腹一杯食べることが重要なので、農業などが発達するが、次第に綺麗になりたいということで、洋服や化粧品が売れるようになる。洋服や化粧品を一通りそろえると、今度は美容院に行きたくなる、といったイメージだろうか。