その手術の名前は「フェイコ・プレチョップ法」。わずか1.8ミリの創口から行う、出血ゼロの手術だ。超短時間、身体への負担は最小限で日帰り可能。保険も適用されるため、3割負担なら片目5万3000円から受けられる。一番の特徴は、水晶体(フェイコ)を、超音波をかけて乳化吸引する前に、あらかじめ(プレ)、砕く(チョップ)ことだ。

「アイデアは、映画で岩盤にダイナマイトを仕掛けて爆破させているのを見て閃きました。水晶体の核に超音波を発振する鋭利なピンセットを差し込み、開いたら、内側からきれいに割れるのではないかと考えたのです」

 白内障は、眼球内でカメラのレンズの役割を果たす「水晶体」が劣化して濁り、光をクリアに通さなくなる目の疾患。70代のほぼ90%が罹患している。80代では白内障でない人を探すほうが難しいとされ、予防法はない。世界的に見れば失明原因のトップだが、日本では、最適な時期に適切な手術をすれば確実に治せるため、年間100万件もの手術が行われている。

 日本で広く普及している従来の術式では、大きな塊の状態から水晶体に超音波をかけ始めるため、10~30分の手術時間を要し、超音波の熱によって角膜や視神経に大きな負担がかかる。感染症のリスクも、時間に比例して増大する。さらに創口も、3~5ミリの大きさになり、眼球の歪みによる「術後乱視」になりやすい。こうしたもろもろの問題点をすべて解決したのがフェイコ・プレチョップ法だった。

「ちなみに近年『レーザー白内障手術』が話題になっていますが、決して新しい術式ではありません。角膜を切開し、水晶体を分割する処置までをレーザーで行うだけで、濁った水晶体を取り除き、眼内レンズを挿入するという肝心な工程は従来通り、超音波で行っています。

 ほとんどが自費診療で行われており、装置も高額でコストもかかります。しかもレーザーの切開はあまりきれいではないので、なかなか傷が閉じにくいと言うデメリットもあり、結果は手でやる手術にはかなわない。

 新しい手術法と宣伝されていても、必ずしも良いとは限りません」

1日60件の執刀を可能にする
こだわりの手術現場

 赤星先生が集中して手術を行う日、秋葉原アイクリニック(東京都台東区)の手術室には2つの手術台が並び、同じ設備と器具が同じ配置で整えられる。双方を往復しながら、先生は1日60件もの手術を行うのだ。