沙希さんのショックと悲しみは、相当なものだった。「この状況では、また子どもを授かっても流産してしまうのでは」と、とうとう彼女は白衣を脱ぐ決心をした。

 日本看護協会の『潜在ならびに退職看護職員の就業に関する意向調査』(2006年10月実施)によれば、免許を持ちながら実際に働いていない潜在看護職の離職理由は、「結婚・妊娠・出産」。このなかには、妊娠継続と無事な出産を望むがゆえに辞めていくケースもあるはずだ。

 また、現在就業していない理由に「子育て」「家事と両立しない」が挙げられている。なんとか出産を遂げても、働きながら子育てすることが困難なことがわかる。潜在看護職は約60万人と言われており、沙希さんもその1人になった。

10人に1人が流産、3人に1人が予備軍
一般事務職員を大きく上回る異常値

 看護師の流産率は一般の職業よりも高く、長年問題になっている。日本医療労働組合連合会の経年調査から、看護職(保健師、助産師、看護師、准看護師)の流産や切迫流産(流産しかかる状態)の増加ぶりがわかる。

 1988年に行なわれた約8万人を対象とした健康労働実態調査では、流産は3.7%、切迫流産は24.3%だったが、『看護職員の労働実態調査』(10年、2万7545人が回答)では、流産が11.2%、切迫流産が34.3%に上った。つまり、10人に1人が流産し、3人に1人が流産しかかっているという異常な状況なのだ。

 他職種と比べてみると、同じ調査を基にしたものではないので単純比較はできないかもしれないが、一般事務職員では17.1%(全労連女性部が行なった『妊娠・出産・育児に関する実態調査』2007年)、介護職員は24.7%(日本医労連の『介護・福祉労働者の労働実態調査』2008年)と、看護職の妊娠異常の高さがうかがえる。

 また、女性労働協会が09年に行なった『働く女性の妊娠・出産に関する健康管理支援実態調査』でも同様の数値が示されており、病院勤務の看護師の切迫流産が31.6%、切迫早産が32.6%となり、介護施設の介護職員は切迫流産が26.9%、切迫早産が21.2%となっている。