性格や行動に関わる遺伝子は少なくとも数十から、場合によっては100個以上あるとみられている。例えば、統合失調症には108個の遺伝子が関わっていることが分かっている。

 これだけの遺伝子が関わる親の性格や形質を、ばっちり忠実に受け継ぐ確率など、かなり低い。

 子どもの遺伝的な素質は、さまざまなバリエーションがあり得る。足し合わせで決まる(相加的遺伝)ような形質の場合、子どもがどうなるかはあくまで確率の問題だ。言えるのは、平均的な形質に回帰しやすいといったことくらいだろう。

 「自分のこの部分は似てほしい」「ここは絶対に似てほしくない」と気をもむのは親心。ただし、「この親にしてこの子あり」にせよ「カエルの子はカエル」にせよ、親の形質がそのまま子どもに受け継がれるような「遺伝」を、過剰に意識する必要はないのである。

Q 収入なんかも遺伝する?

 知能や性格が遺伝の影響を受けるなら、収入はどうか。

 中室牧子・慶應義塾大学准教授らの研究では、全体として見ると収入のばらつきの約30%は、遺伝によって説明がつくとしている。

 さらに興味深いのは、「遺伝や環境による影響度が年齢によって変化していることを明らかにした」(安藤寿康・慶應義塾大学教授)という点だ。

 下図のように20代前半では、遺伝が20%程度、家庭での共有環境が70%程度だ。それが、年齢が上がるにつれて共有環境の影響度が小さくなり、遺伝の影響はピークの40代前半になると60%近くに達するというのである。知能などと同様、年を取るほど遺伝の影響は強くなるというわけだ。