年齢がいっているからこそ
SFを読むべきと思う理由

 SFには、本当に様々な世界観が詰まっています。いいSF本に出合うと、読むうちに発想力だけでなく、いろいろな感覚が見事に研ぎ澄まされていきます。いろいろな常識から自由になっていくのです。若いうちからSFを読むことで、私も発想が豊かになり、コンサルタントとしても本当に助けられてきました。

 SFというのは、科学のある現象や理論を拡大解釈して、極端な世界観を創造し、その世界を成り立たせるために、他のルールを変えてしまうという作業の上に成り立っているものだと思います。

 そうすることで、普通では不可能なことを可能にして、今ある課題を浮き彫りにしていくという物語が実は多いのです。

 ある時、ある場所の話に置き換えることで、政治状況や主義主張、宗教などに内在する矛盾や課題を無理なく際立たせることも可能なのがSFの世界です。

 だから、学ぶべきことが多い。

 例えば、先ほど出た石川英輔氏の『大江戸神仙伝』も好きな話です。石川氏の代表作『大江戸シリーズ』の第1作です。現代の製薬会社に勤めている主人公が江戸の時代にワープしてしまいます。そのうちに行き来までできるようになるのですが、それはまた別の話。なぜワープできるのか、行き来できるのかも問題ではありません。とにかく、江戸時代と現代を行き来できるようになったらどうなるか、という仮説の元に物語は進行します。ここがSFのSFたるゆえんです。

 彼は江戸時代である医者に助けられ、その手伝いを始めます。ここで、伏線であった製薬会社勤務が活きてきます。彼の持つ科学、とりわけ化学の知識が活躍します。例えば、江戸時代には脚気が流行していて大変なのですが、脚気はビタミンB1とB12の不足から起こる。だから米の研ぎ汁を飲ませればいいという知識が彼にはある。それで奇跡を起こすことができるわけです。

 現代との行き来ができるようになると、今度は江戸時代では至極一般的で廉価な根付に目をつけ、江戸で仕入れて現代で高く売るということもするようになります。文明の利器を逆に江戸時代に持ち込むようにもなりました。そうやって「神仙」と呼ばれ、大尽として暮らすようになる……。

 大切なのは、そうこうするうちに、最初は嫌っていた江戸の暮らし、そのエコロジカルな生き方が魅力的に思えてくることです。