世の中には、生涯で本を5冊も読まない人が大勢います。
「購入された書籍全体の95%が、読了されていない」のです。
 でも、途中まで読もうとしただけでも、まだマシです。
「購入された書籍全体の70%は、一度も開かれることがない」のですから。
「最初から最後まで頑張って読む」「途中であきらめない」
 こんな漠然とした考え方は、今すぐ捨ててしまって結構です。
 これから紹介する1冊読み切る読書術さえ身につければ!

【これなら読める!1冊読み切るメソッド】 いつでもどこでもスキマ時間に読む

1話3分もあれば読み切れる!

明治大学文学部教授・齋藤孝氏齋藤 孝(さいとう・たかし)
1960年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業。同大学大学院教育学研究科博士課程を経て、明治大学文学部教授。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。ベストセラー著作家、文化人として多くのメディアに登場。著書に『声に出して読みたい日本語』(草思社文庫、毎日出版文化賞特別賞受賞)、『身体感覚を取り戻す』(NHKブックス、新潮学芸賞受賞)、『雑談力が上がる話し方』(ダイヤモンド社)、『大人の語彙力ノート』(SBクリエイティブ)など多数。<写真:読売新聞/アフロ>

 前回、文豪の短編(ショートショート)を読んでみることをおすすめしましたが、「文章量が少ないとはいえ、文豪の作品はとっつきにくい」と思う人がいるかもしれません。
 それならば、星新一さんの作品を読んでみてはいかがでしょうか。

 星新一さんはSF作家であり、ショートショートの第一人者として、とても有名な方です。
 1000編以上の作品を残していますが、1話3分もあれば読み切れるものが多いです。
 ごく短い文章でありながら、きちんと起承転結があり、奇抜なアイデアと意外な結末で、読みごたえがあります。

 また、『2分間ミステリ』(ドナルド・J.ソボル著、武藤崇恵訳、ハヤカワ・ミステリ文庫)というシリーズもおすすめです。
 見開き(2ページ)で完結する1話が、タイトル通り2分程度で読めるので、いつでもどこでもスキマ時間に楽しめます。

高い山へ挑むように
徐々に長編へたどり着く

 こうしたショートショート集は、それぞれ独立した作品の集合体ですから、なにも最初から順番に読む必要はありません。

 そのときの気分に応じて、読みたいと感じた話から読めばいいです。
 読んだ話にボールペンでチェックを入れるなどして、コツコツと読み切っていきましょう。

 このように短編(ショートショート)から徐々に慣らしていく作業は、登山家がエベレストのような高山に挑むとき、標高の低い地点から高い地点へと徐々に体を高度順応させるようなものです。

「ショートショート→短編→中編→長編」という具合に、徐々に慣らしていけば、必ず長編も踏破できるようになります。