その頃2階のドア付近で寝ていた熊さんはガラスの割れる音で目が覚めた、が体がCO中毒でスムーズに動かない。それまではとても静かだったのだが、何やら外が騒がしいし遠くでサイレンの音が聞こえてきた。

 2階ドアの隙間から何やら煙が入ってきた。なんとか起きてドアを開けて階段をのぞくとかなり熱い真っ黒な煙がすごい勢いで部屋に侵入してきた。その煙を瞬間に吸い込んだ熊さん激しく咳き込む、咳き込めば咳き込むほど煙を吸ってしまう。3度ほど呼吸をしたかと思ったら、吐き出すことも吸うこともできない。ちょうどプールで溺れ水を吸い込んでいるように呼吸ができない。熊さんはそのまま倒れてしまった。

 倒れたのが奥さんの上だったため奥さんもびっくりして飛び起きた。すでに部屋の中は黒煙が充満して良く見えない。奥さんは室内灯を付けようとリモコンを操作したがどうしても照明がつかない。1階の火災が配電盤を焼いていて電気は遮断されてしまった。

 奥さんは、はうようにして窓を開け新鮮な空気を求めて窓から顔を出す。1階から外へ噴出している煙も2階の窓に上がり始めた。その煙の先に新鮮な空気がちらっと見える。奥さんは何とかその空気を吸おうと必死に顔を出す。

 しばらくして消防隊到着。119番通報から約7分。

「すぐに助けに行くから飛び降りるな!」と消防士がメガホンで叫んでいたが、奥さん呼吸ができなくてそれどころではない。2階だから飛び降りても大丈夫かな、と考えもせずに飛び降りた。

 新鮮な空気を求めて身を乗り出したのであって決して飛び降りるつもりではなかった。お尻から墜落して気が遠くなりかけた時に「2階に夫!」と叫んだ。

 すでに1階は火の海で割れた窓ガラスからは大量の煙と炎まで見える。しかし2階は煙は充満しているがそれ以外はほとんど変化はない。熊さんは倒れる直前にドアを閉めていたのだが、それでも隙間から煙が入ってくる。

 ドアの隙間だけではなくコンセントからも煙が噴き出し始めた。

 熊さんは倒れたまま動けないが意識はある。恐ろしいことに意識があるのに体が動かない。「かみさんは助かったか?」さっき窓を開けたようだが急に姿が見えなくなったなと考えているうちに意識が遠のく。