その背景には、統計法に係る総務大臣の権限の限界と、各府省の統計担当部門の組織や定員の在り方の問題、そして統計担当職員の育成の在り方の問題があると考えられる。

 まず、統計法に関する総務大臣の権限の限界については、拙稿『勤労統計不正問題はなぜ起きた?組織と人材の厄介な「病巣」』において記載しているのでここで改めて詳しく触れることはしないが、今回の基幹統計を対象とした点検がお手盛りで中途半端なものになったのも、この権限の限界が影響していることは、論をまたないだろう。

 協力依頼しかできない総務大臣、そして統計委員会には自ら各府省の統計担当部門を調査することができない。

 たとえ提出された調査結果、点検結果が「不十分である」と判断しても、追加で関係資料等の提出を“依頼”することはできても、「提出しろ」とは言えない。ましてや統計担当部門の事務室に立ち入って調査を行うこともできないのである。

 次に、各府省の統計担当部門の在り方について。わが国の統計機構は、統計庁や中央統計局のような1つの機関が一元的に官庁統計を担うのではなく、各府省に統計担当部門が設けられている分散型統計機構が採られている。

 これは、総務省の説明によれば、行政ニーズに的確、迅速に対応することが可能、所管行政に関する知識と経験を統計調査の企画・実施に活用できる、といったメリットがある。

 その一方で、統計の相互比較性が軽視されやすい、統計調査の重複や統計体系上の欠落を招きやすいといったデメリットがあるとされている。統計法や総務省の統計基準担当政策統括官はこのデメリットを補うために設けられているものであると言ってもいいだろう。

 もっとも、これは同時に各府省の統計担当部門の独立性が高いことを意味し、統計法の統一的な運用や統計基準担当政策統括官の総合調整業務を難しくする。

 従って、それにふさわしい組織の在り方や権限の在り方を検討する必要が出てくる。前者については、中央省庁等改革に際して、新たに「統計庁」を設けてそこに官庁統計の管理や実施を一元的に担わせようという案が検討されたことがある。

 こうした統計組織の在り方は集中型統計機構と呼ばれるが、総務省の説明によれば、統計の専門性をより発揮しやすい、統計の整合的な体系化が図りやすいといったメリットがある。

 一方、行政ニーズを的確、迅速に反映した統計調査が行われにくい、所管行政に関する知識と経験を統計調査の企画・実施に活用しにくいといったデメリットがあるとされる。