「ずっとここで競争を続けていく人生が、果たして魅力的なのか……?」
「かといって、PDCAを回すだけの『カイゼンの農地』におとなしく帰るには、あまりにもいろいろなことを知りすぎてしまった……」
結局、僕たちは「戦略」と「カイゼン」とのあいだを揺れ動きながら、ちょうどバランスが取れそうな場所を探すほかないのだろうか……?
そうしたなかで、人々がふと目を向けると、「戦略の荒野」から一本の橋が伸びているではないか。その先に広がっている新たな大地こそが、「デザインの平原」である。次のイラストを見てほしい。
「戦略」に明け暮れる日々に疲れていた僕にとって、何よりもの朗報は「デザイン思考(Design Thinking)」という橋のおかげで、「論理の大陸」から「創造の大陸」への道が開けたことだった。
僕がこの大地の存在を知るきっかけになったのは、論理一辺倒の世界から抜け出し、感性を生かすことの重要性を説いたダニエル・ピンクの『ハイ・コンセプト――「新しいこと」を考え出す人の時代』(三笠書房)だった。
より有名な本としてはトム・ケリーらの『発想する会社!――世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法』(早川書房)もあるだろう。世界最高のデザインファームIDEOの創業者であるデビッド・ケリーは、スタンフォード大学のカリキュラム内容なども踏まえて、デザイン思考のフレームワークを提唱した。
こうして「何やら経営・ビジネスとデザインとのあいだに、橋渡しがなされつつあるらしい」ということは、世の中にだんだん認知されるようになった。
「目的の難民」になりかけた僕が選んだのも、この道だった。