「つなげる力」を求める入試問題が増えている
中学入試では、有名校になるほど個別に暗記した知識だけでは対応できない問題が増えていきます。しかも、その切り口は多様化しており、ある中学校では、社会で「日本国憲法第9条を変えるべきか否か」について述べさせる問題が出ました。
このときに、単純に今の憲法第9条を覚えていたのではダメで、自衛隊の成り立ちや実態、過去にあった戦争や原爆の被害、現在の世界情勢やテロの問題など、多くの材料を基礎として持ち、それを有機的につなげて掘り下げる能力が求められます。
理科では、灘中学校で、「初日の出を2回見る方法」に関する問題が出ました。この問題を解くには、太陽が昇っていく地軸や時間の考え方といった複数の要素を掛け合わせていく必要があります。これもまた、点の基礎知識を有機的に結びつけることが求められています。
女子校では、2017年度の頌栄女子学院のスーパームーンを題材にした問題が、「つなげる力」が必要とされる良問だったと思います。
また、点を線でつなげたときに、2つ先、3つ先の答えが求められるケースもあります。
以前だったら「1945年8月6日に原子爆弾が投下された都市はどこか」という問いに「広島」とストレートに答えれば良かったのが、オバマ大統領のノーベル平和賞受賞の理由からだんだんとつなげていって広島に行き着くというような「迂回した」問題が出されるようになっています。
さらには、完全なオープンクエッションも出ます。
「教皇フランシスコは、今の世界に必要なのは壁ではなく橋だと述べています。あなたにとって橋とはなんですか?」
ここで「橋は川を渡るときに使うものです」と答えたのでは話になりません。模範的な回答としては、ベルリンの壁のような世界を分断していた壁について述べ、その上で、橋が連携や平和の象徴であるという結論に持っていく必要があります。そのためには、東西冷戦や宗教戦争、世界を分断している問題について知っていることが不可欠です。
一見、難しそうに見えるこうした問題も、1つひとつの要素に分解していけば必ず解くことができるものです。ビジネスで起きるトラブルも、結局その問題の原因を分解していけば解決できるのであって、なにかトリッキーなことをするわけではありません。
分解したときの基礎的知識をいかに持っているかが重要なだけ。子どもの学習もそれと同じです。