カルロス・ゴーン氏Photo:Reuters

 日産自動車前会長で昨年11月に羽田空港で逮捕されたカルロス・ゴーン被告がついに保釈を認められた。保釈保証金は10億円だ。面倒な条件があるとはいえ、日本の法的手続きにおいてわずかであっても一歩前進したことにはなる。ゴーン被告の保釈請求はこれまで2度却下された。新任の弁護士は保釈の条件として同被告を監視下で生活させ、電話やパソコンの使用を制限することを提案した。

 もしかすると日本国民は、自動車業界のカリスマに対するこの過酷な扱いにより、自分たちの司法制度がまるで第三世界のように映っていることを理解し始めたのではないか。ゴーン被告の家族は「中世のような規則」と「悲惨な」状況について非難し、国連人権理事会の「恣意的抑留に関する作業部会」に訴える準備を進めていた。弁護人を務める弘中惇一郎弁護士は先月、この事件について「日本はビジネス手法に関して、当局による個人への予測不能で行き過ぎた措置を認める国だというメッセージになりかねない」と指摘した。

 まさにそうだ。ゴーン被告は不正行為を否定している。5日には「私は無罪だ」とし、「これらの全く根拠のない罪に対して公正な裁判で自分自身を弁護するために全力を尽くす」と述べた。検察当局は数カ月にわたり、弁護士の立ち会いなしに同被告を取り調べてきたが、まだ説得力のある証拠を示せていない。

 ゴーン被告が問われている罪は、繰り延べ報酬の報告を怠ったこと、報酬が円建てのため利用していた為替取引の担保の一部を日産に付け替えたこと、そして個人的に協力を受けたサウジアラビアの実業家への報酬を日産に払わせたことだ。同被告はこれに反論し、非公開の報酬契約は一切結んでいないこと、担保は2008~09年の相場急落時の一時的な対応策で日産には損害を与えていないこと、またサウジの実業家は「日産に大きな恩恵を与えた非常に重要なサービス」を提供したことを主張している。

 もしこれに反する証拠があるならば、検察当局はそれを提示していない。公表された証拠に基づくと、本件は企業の最高経営責任者(CEO)の行動を巡る見解の相違のようであり、法廷ではなく役員会議室で処理できたのではないかと思われる。ゴーン被告に対する実際の裁判が始まるのはまだ何カ月も先になる見通しだ。ただ少なくとも、もう独房で待つ必要はないだろう。

(The Wall Street Journal)