2018年は、毎月勤労統計の作成方法自体が、大幅に見直された年である。

 従業員30人~499人の事業所について、それまでの調査対象を2~3年で全部入れ替える方式から、毎年、3分の1ずつ(2018年と2019年については2分の1ずつ)を入れ替える、部分入れ替え方式(ローテーション・サンプリング方式)に変更したのもその1つだ。

 その結果、2018年のデータと2017年のデータとの間には、もともと「段差」が発生する状況にあった。

 統計作成方法の「見直し」に乗じて「復元処理」も正常化してしまえば、過去のミスは気づかれにくい。マネー・ロンダリングならぬ「データ・ロンダリング」が結果的に行われた形になった。

 実際、多くのエコノミストは、「公表値」で見た2018年の賃金上昇率があまりにも高くて困惑したが、それは「見直し」のせいだと考え、不適切処理が影響していたとは露ほども想像しなかった。

 この2018年の「見直し」を巡っても、野党からは本質を外れた追及が執拗に行われている。

 部分入れ替え方式への移行が、アベノミクスの成果を見せたい官邸の圧力で決定された、という批判だ。

 当時の首相秘書官が厚労省の担当者を呼んで「問題意識」を伝えたとされるが、しかし、統計の改善に向けた問題意識を、官邸が統計作成部局に投げかけること自体には、何の問題もない。

 そもそも「ローテーション方式」にしたところで、賃金上昇率が高まるわけではない。

「ローテーション方式」のメリットは、過去の統計を事後修正する必要性が低下するという点にあるのであって、前年比が高めに出るか低めに出るかはわからない(強いて言えば低めに出る確率の方が高い)。

 2018年に賃金の伸びが高めに出たのはたまたまであるし、それには「ローテーション方式」以外の「見直し」がより大きく影響した。

 このように、今回の統計不正は、統計作成を巡るガバナンスの欠如を示すものではあるが、首相秘書官や厚労省の担当者らに、アベノミクスの成果を良く見せたいという動機があったとは考えにくい。

 本質的でない議論に国会審議の多くの時間が割かれていることは残念なことだ。