また、いわゆるメタボ健診では、聴診が必須項目であることから、「遠隔での聴診が可能になれば、わざわざ医療機関に行かなくとも、職場や自宅で健診を簡単に受けることが可能になり、これまで面倒がって敬遠していたような人たちも、健診を受けるようになるかもしれない」と考えた。

 さっそく、テレビ電話を介して超聴診器を使う実験をしてみたところ、判明したのは意外な事実だった。

「電話回線を通すと、心音のデータが壊れてしまうことが分かりました。50~100ヘルツ以下の低音部が削られて、高音部が増幅される。つまり、電話回線にのせた段階で、心音の半分はカットされ、ダミーの音が加わってしまうのです」

 これは、日頃から心音を、注意深く聴き続けてきた小川さんだからこそ、気づけたこと。問題を解決するために、スピーカーを高音質のものに変えてみたが、低音部が一層削られただけで、ムダに終わる。人の声と心音は違い、会話には、低音部は必要ないからだ。

「結果、どんなにデバイスを改良しても、その壁は越えられないなと。音が壊れないように頑張るという次元ではないという結論に至りました。

 そこで開発したのが、心音を可視化したデータを、心音と一緒に送る遠隔医療専用のビデオチャットシステムです。つまり、耳から聴く音と目で見る可視化したデータを併用することで、診断の精度を担保する工夫を加えました」

遠隔健診の実証実験開始
医療は必ず変わる

 昨年11月からは、水俣市(熊本県)で、遠隔健診の実証実験も開始した。

「薬局に、検体測定室を設けて、医者、看護師、検査技師、薬剤師の誰かがいるところで身長、体重等の計測、採血、超聴診器による遠隔聴診を受けてもらい、結果説明を、AMI側が担っていくというプロジェクトをやっています。

 マスコミではよくオンライン診療が報道されますが、今回の取り組みはオンライン受診勧奨です。診断処方はしません。そのあたりは、法律で制限があるので。

 要するに、通常の健診と同じデータを見て、聴診もして、その結果を医師が診て、さらに健診も受診しましょうとか、できれば受診しましょうとか、絶対受診しましょうとか(笑)、いずれにしても『受診しましょう』ということを促します」