森本氏起用の問題点は、①元自衛官、②非国会議員、③集団的自衛権の行使論者、④安全保障の専門家、などに集約される。

 ①は文民統制との関係で問題にされているが、私はこれをそれほど問題視していない。

 ②も、国会議員であることが望ましいが、最終責任が首相にあると言うことで容認できる。

 ③はかねてから森本氏の主張の根幹であり、今までの政府や民主党の姿勢と折り合いをつけるのは困難だろう。この点に国会質疑が集中することが予想される。

 ④は私が最も心配するところ。安全保障の専門家であることが起用の理由とされるが、そこが実は一番問題である。

 世界は、経済、社会、歴史、文化、安全保障など多様な視点で総合的に観なければ理解できない。

 それぞれの専門家の視点は必要だが、それで全体像を掴むことはできない。

 もちろん防衛大臣は、安全保障の基本姿勢や基礎知識は必要だが、安全保障に足場を置いた専門家である必要はない。

 普天間移設問題は、「アジアの安全保障」と「沖縄県民の生活」という2つの異質な課題を含む悩ましい問題だ。

 安全保障の専門家の防衛大臣は、沖縄県民に安全保障最優先の誤ったメッセージを送りかねない。普天間問題の解決への道程は田中直紀前大臣当時より、その意味では困難になる可能性が出てきた。

 森本氏を起用するなら、副大臣の方が沖縄問題のためにも、本人のためにもよかったのではないか。


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