そもそも冒頭に記したように、日本人は遺伝学的にとても不安要素の強い国民だといわれます。生物学的な話をすれば、いくつかある脳内物質(ホルモン)の中で、3大脳内ホルモンといわれるものがあります。

 それは、セロトニン、ノルアドレナリン、そしてドーパミンです。

 セロトニンは不安感を抑え、楽観性を増す脳内物質です。精神を安定させる物質です。ノルアドレナリンは興奮や覚醒をつかさどる物質で、これが多いと活動的になります。最後はドーパミン。新規探索志向、つまり好奇心の源といわれる物質です。

 このうち「不安」に直結する物質がセロトニンですが、セロトニントランスポーターという運搬役があって、セロトニンを回収し、再利用するのだそうです。

 このトランスポーターの型を決める遺伝子があり、その型の分布が人種によっても大きな違いがあるといわれます。

 遺伝子の型によって再利用の効率が違ってくるので、その結果、セロトニンの働きに違いが出てくるわけです。働きが悪いと、不安感が強まるということになります。

 セロトニントランスポーターの遺伝子にはS型とL型の2種類があり、その組み合わせによってSS型、SL型、LL型の3タイプに分かれます。これを日米で比較してみると面白いことがわかりました。

 日本人はSS型が全体の7割近くを占め、LL型は数%しかいないそうです。対して米国人はLL型が多数で、SS型は極端に少ない。結果、日本人は慎重派、悲観的で緊張しやすい人が多く、米国人にはストレス耐性が高く、楽観的な人が多いということがいえるそうです。

 そうしたことを考え合わせると、厄年を過ぎて慎重になる、不安を覚えるというのも、日本人として致し方ないことなのかもしれません。

 雄大な大陸を背景にした米国民と、地震や噴火、台風といった自然災害の多い島国に住んでいる日本国民の違いという見方もできるかもしれません。いずれにしても、不安な心とどう付き合っていくかは、特に日本人、中でも私たちのような年齢になった人間にとっては大切な課題なのだと思います。