認知症の高齢者急増の一方で
後見制度の利用者は頭打ち

 こうして、最高裁が主導して「親族後見から専門職後見へ」という大きな枠組みが整えられてきた。そこへ、今回の最高裁の意見表明だから驚きだ。「親族後見を優先」とは、この枠組みを逆転させることである。

 その理由を最高裁は説明していないが、答えは明らかだろう。後見制度の利用者が増えずに頭打ち状態だからだ。制度発足後の12年後、2012年に家裁への申し立てはやっと3万4000件に達した。その後は足踏み状態で、2018年になっても申し立て件数は3万6549件にとどまった。

 現実に2018年12月時点での成年後見利用者は約21万8000人しかいない。一方で、認知症の高齢者は急増している。今や500万人を上回り、軽度の認知症者障害(MCI)を含めると、1000万人時代を迎えようとしている。

 認知症が極めて日常的なこととして受け止められ、認知症ケアへの関心は急激に高まっている。認知症本人に代わって介護保険や医療保険の利用手続きをしなければならない場面も増加している。つまり、後見制度への需要は広がっているのに、実際の利用件数は頭打ちという状態である。

 なぜか。後見制度の使いにくさのためだろう。Aさんの事例がその典型だ。そこで、最高裁はやっと現場の苦情を救い上げる形で「専門職重視」の姿勢を見直した。後見人の交代を容認するのもその一環である。

 3月18日の専門家会議で最高裁から出された資料では「後見人選任後も、後見人の選任形態等を定期的に見直し、状況の変化に応じて柔軟に 後見人の交代・追加選任等を行う」と記されている。ここでも、専門職後見人にこだわらないという路線転換を行った。

 現在、すでに後見活動を受けている本人や家族にとっては、後見人交代の可能性への扉が開かれたことは朗報だろう。Aさんの交代への訴えが現実的になった。