「カーッペッ!」を連発して痰を道端に吐き捨てる…。空気が乾燥して喉がイガイガしやすい冬場は、こんな行為を目にする機会も多い。所構わず痰を吐く行為はマナー的にアウトなうえ、痰の出し方によっては体への負担が大きく、病気のサインの可能性も。そこで、複十字病院で呼吸器科患者の呼吸ケアを専門に行う千住秀明氏に、正しい痰の出し方を聞いた。(清談社 松嶋千春)
風邪や喫煙で痰が増えるのは
異物を除去する線毛が抜け落ちるから
忌み嫌われる痰だが、それ自体は呼吸器の自浄作用のひとつ。痰のもとになる気道分泌物は正常時、誰でも1日あたり100ミリリットル程度排出されているという。
「正常時は、白っぽく透明な気道分泌物が一定量排出されています。気管内の線毛の動きによって喉のほうに押し上げられ、寝ているときやしゃべっているときなど、無意識のうちに飲み込んでいます。しかし、体内に異物が入ってきたり感染を起こしたりすると、悪いものを排出しようとして気道分泌物が多く排出されます」(千住氏、以下同)
喉の風邪をひいたときに痰が増えるのも、このためだ。そのほかにも、喫煙も痰が増える一因となっているそうだ。
「たばこを吸ったり感染を繰り返すと、痰を押し上げてくれる線毛が抜け落ちてしまうため、そのぶん気道のなかに痰がたまりやすくなります。ちょっと想像してみてほしいのですが、真夏の部屋に生卵を置いておくと、腐りますよね。卵と同じく、水とタンパク質を主成分とする気道分泌物が、体温36~37度、湿度100%の環境に長くとどまると、菌がどんどん繁殖していって、色のついた痰になります。それをきれいにするため自浄作用が働き、さらに痰の量が増えるという悪循環に陥ってしまうのです」