政府が企業の労働環境改善や生産性向上などを目的に「働き方改革」を掲げてはや幾年…とはいえ、実際に「働き方改革が進んでいる」と胸を張れる企業は少ないかもしれない。そんななか、革新的な働き方改革を実施して成果を上げている、あるブライダル企業に話を聞いた。(清談社 真島加代)
華やかなイメージの裏で
激務をこなすブライダルの立役者たち
ブライダル業界と聞くと、新郎新婦の幸せをサポートする縁の下の力持ちというイメージのほかに、過酷なサービス業で有給休暇の取得は夢のまた夢…華やかさの裏で激務をこなしている姿を想像する人も多いはず。しかし、ブライダル業界においてスタッフの働き方改革に邁進して結果を出しているのが、ノバレーゼだ。
「ノバレーゼでは『スタッフが幸せでなければ、お客様の幸せをサポートすることはできない』という企業理念のもと、長期雇用や、社員のモチベーションアップなどにつながるさまざまな制度を導入しています。福利厚生制度を充実させて、過去5年間で社員の離職率を7ポイント下げることに成功しました」
そう話すのは、ノバレーゼ総務人事部長の小高直美氏。同社の取り組みのなかでも注目を集めたのが「有給休暇取得率100%義務化」だ。
「2014年の下半期に試験的に導入し、2015年からは本格的に有給休暇取得を義務化。2013年度は44.1%だった有給休暇取得率が、義務化後の2017年度には約80%を達成しました」
厚生労働省が発表した「年次有給休暇の取得状況」では、日本人の平均取得率は51.1%。ブライダル業が含まれる生活関連サービス業・娯楽業に至っては36.5%にとどまっていることを見ても、同社の取得率約80%が、いかに大きな数字であるかがわかるだろう(データ参考:「平成30年就労条件総合調査の概況」)。
「有給休暇取得を義務化する前に社員にアンケートを取ったところ『有給休暇を取るのは後ろめたい』という声が多くありました。有給休暇の“後ろめたさ”を払拭するために、有給休暇取得率が未達成の社員が多い部門の部門長は、人事評価の査定対象になることを決定。同時に、部門長が全正社員・契約社員の有休取得希望日をヒアリングして、1年の初めに『休むための年間計画』を立てることを定めました」
そして、導入した年には、年間計画に沿って「休暇取得達成率」を部署ごとに管理し、3ヵ月に1度、達成率をランキング形式で発表。個人の業務内容はチーム内で共有し、担当社員が休んでいる間も、外部とのやりとりに支障がないように対策を講じている。
「また、新卒社員の研修でも『有給休暇取得の大切さ』をしっかり伝えています。義務化後には『有休を取りやすくなった』『家族と過ごす時間が増えた』などの好意的な意見を社員から聞いています。これからも全社員の有給休暇100%取得を目指して、仕組みづくりをしていく予定です」
ノバレーゼは多忙なブライダル企業でありながら、他業種でも難しい「有給休暇取得率の向上」で着実に成果を上げる、稀有な存在なのだ。