目的と手段を間違う社長が多い

 お金は、その目的を達成するための手段にすぎません。
 この目的と手段を間違う社長が多いので注意してください。

 もちろん、日本レーザーにも数値目標があります。
 当社のクレド(経営理念、ミッション、価値観、経営方針などを言明したもの)には、こう明記されています。
「JLCは40億円(¥100/$)の受注・売上を数年内に達成し、近い将来50億円(¥100/$)を成し遂げます」

「JLCグループは、長期的にはJLCホールディング傘下に数社の企業を加えることで100億円(¥100/$)の年間売上を目指します」

 しかし、「近い将来」「長期的には」という言い回しをしていて、「いつまでに」と期限を明確にはしていません。

 毎年、外部環境も社内環境も為替レートも取引先の状況も、絶えず変化しています。

 大切なのは、どのような変化に見舞われても、きちんと対応して「黒字にする」ことです。

 たとえば、「2020年までに売上を50億円にする」と事業計画で期限を決めてしまうと、その数字を達成するために、数字だけを追いかけて無理をするようになる。

 社員の犠牲のうえに売上を上げるのは、本末転倒です。

 大切なのは、中期計画を立てることではなく、
 環境の変化に対応しながら、
 1年ごとに「赤字にならない経営」を続けること。

 それができれば雇用は守れますし、
 無理にお金を借りる必要もありません。

 私を襲った数々の修羅場は、言い換えると、

「お金の修羅場」

 でした。
 赤字が続けば銀行格付けが下がり、銀行からの融資が受けられないかもしれない。
 そうすれば資金ショートを起こし、最悪の場合は倒産です。

 倒産すれば、社員は路頭に迷うことになる。

 そうならないように、どれほど困難で、どれほど理不尽な修羅場が訪れようとも、経営者は覚悟を決め、腹を据え、決意を持って、難事にあたらなければならないのです。一緒に頑張りましょう!

近藤宣之(こんどう・のぶゆき)
株式会社日本レーザー代表取締役会長
1944年生まれ。慶應義塾大学工学部卒、日本電子株式会社入社。28歳のとき、異例の若さで労組執行委員長に推され11年務める。取締役アメリカ法人支配人などを経て、赤字会社や事業を次々再建。その手腕が評価され、債務超過に陥った子会社の日本レーザー社長に抜擢。就任1年目から黒字化、以降25年連続黒字、10年以上離職率ほぼゼロに導く。役員、社員含めて総人員は65名、年商40億円で女性管理職が3割。2007年、社員のモチベーションを高める視点から、ファンドを入れずに(社員からの出資と銀行からの長期借入金のみ)、派遣社員・パート社員を除く現在の役員・正社員・嘱託社員が株主となる日本初の「MEBO」(Management and Employee Buyout)で親会社から独立。2017年、新宿税務署管内2万数千社のうち109社(およそ0.4%程度)の「優良申告法人」に認められた。日本商工会議所、経営者協会、日本生産性本部、中小企業家同友会、日本経営合理化協会、関西経営管理協会、松下幸之助経営塾、ダイヤモンド経営塾、慶應義塾大学ビジネス・スクールなどで年60回講演。第1回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の「中小企業庁長官賞」、第3回「ホワイト企業大賞」、第10回「勇気ある経営大賞」など受賞多数。「人を大切にする経営学会」の副会長も務める。著書に、ロングセラーとなっている『ありえないレベルで人を大切にしたら23年連続黒字になった仕組み』(ダイヤモンド社)などがある。
【日本レーザーHP】http://www.japanlaser.co.jp/ 【夢と志の経営】http://info.japanlaser.co.jp/