新入社員と上司新入社員が会社を辞めるのは、多くの場合、仕事がきついからではないようです(写真はイメージです) Photo:PIXTA

新入社員の気持ちを考える

小宮コンサルタンツ代表 小宮一慶小宮一慶
小宮コンサルタンツ代表

 ようやく採用した新入社員がすぐに辞めてしまった――。新入社員の離職率の高さは、中小企業経営者が抱える深刻な悩みの1つです。新入社員を辞めさせないための特効薬はありませんが、経営者としてできることはあります。

 まず前提として「人を育てる」という経営者の強い気持ちが不可欠です。社会経験の少ない新入社員にとっては、「自分が成長している」「成長する機会を与えてもらっている」と感じていることが大切なのです。

 ですから、経営者は不安な気持ちの中で、「自分の将来は大丈夫か」と考えている新人たちに、「この会社なら大丈夫」「この会社なら自分も成長し、貢献できる」と感じてもらう努力を行う必要があります。この点において、新入社員側でコントロールできることはほとんどなく、会社側の努力や姿勢が問われるのです。もちろん、先輩や上司からのサポートが必要なことは言うまでもありませんが、これも経営のスタンスや社風にかかっている部分が少なくないのです。

 そして、今となっては今年の新人については遅すぎますが、来年度の採用も始まっているので、今のうちにきちんと認識すべきことがあります。それは、採用の時点では、自社に合ったレベルの人材、社風に合った人材を採ることが重要です。以前にもこのコラムでお話ししましたが(参照「良い人材を採用できないのは、自社のレベルと釣り合わないからだ」、かつて毎年、5~6人の新卒を採用している並レベルの中小企業がありました。

 ある年、その企業に(何を間違えたのか)超有名大学に在学する学生が応募してきました。社長は大喜びで内定を出したのですが、私は「内定を取り消した方がいい」「入社しても長続きしない」とアドバイスしました。失礼ながら、その会社のレベルと学生のレベルに明らかなミスマッチが起きていたからです。しかし社長はそのまま学生を採用。その結果、わずか2日で退職願が提出されました。その学生も勤める前にその会社のことがわかるべきでしたが、頭の良い子でしたから、勤めてみたら1日ほどでその会社と自分のレベルが合わないことがわかったのでしょう。

 ミスマッチ採用は会社にとっても、新入社員にとっても不幸です。それを防ぐためにインターン制度をつくるなどして、内定を出す前に会社を体験してもらう機会を設けるといいでしょう。お互いに1~2日で見極めるのは難しいでしょうが、1週間も働いてもらえば、お互いの相性がわかるはずです。