北京市、上海市と並ぶ中国三大都市の一つ、広東省広州市の中心部から車で1時間30分ほど走るとスーパーもコンビニもない農村の風景が広がる。

 ドローンを使う農家、郭建華さん(24歳)の農場は、伝統的な暮らしとソーラー発電の電灯などが混在していた。ドローンに限らず新しもの好きな一家のようだ。

 郭さん一家は建華さんと両親の3人でレモンを作ってきたが、2018年8月に農業ドローン最大手、中国XAGのドローンを導入してから20ヘクタールのレモン畑を建華さん1人で管理するようになった。

 ドローンを飛ばしてもらったが、必要な作業はタンクに農薬を入れることと、スマホで農薬をまくエリアを選びタップするだけ。ドローンが自動飛行してレモンの木の列に沿って飛び、元の位置にぴたりと着地するまで郭さんは見守っているだけだった。

 初めにドローンで畑の形や木の位置を記録し、基地局を建てれば前述の作業だけで農薬をまける。おまけに農薬を無駄にすることがないため使用量を3割減らせた。

 かつては一家総出で農薬をまいていた。1ヘクタールの作業に1日かかる重労働だったが、いまでは全農地(20ヘクタール)の散布が1日で終わる。

 郭さんは年600トンを生産するが、これに1キログラム当たりの平均単価8元(1元=16.5円)を掛けると売上高は7920万円になる。

 これに対し日本の果樹農家の過半は売上高200万円未満。かんきつ農家の平均経営面積は0.5ヘクタールにすぎない。

 目下のところ、郭さんの悩みは販売価格の安さだ。レモンの単価が1キログラム5元まで暴落しているという。だが、この悩みも技術革新が解決することになりそうだ。ドローンで減らした農薬使用量などの生産履歴を消費者に開示できるようになれば、「環境に配慮して生産したレモン」として高値で販売できるからだ。