「まずは上司に言われたことを完璧にこなす」「新規の取引先を増やして、売り上げを伸ばす」「現在の契約を少しでも長く続けてもらえるように、丁寧にお客様をフォローする」など……。

 考え方としては悪くはないが、具体性に欠ける話しか出てこなかった。

 この時の私のトレーニングには、この企業の研修部長やトレーナーも同席していた。このやりとりを聞いていた彼らは、「入社して数年経過している若手営業でも、まだ甘い考えが抜け切れていないのか」「一体彼らの上司は、これまでどのような指導をしてきたのか」と愕然(がくぜん)としていた。

 その後、前回お伝えした商談を成功させる情報の整理の仕方「ファイブフォース」を中心に、フレームワークを示し、ワークで情報の抜け漏れ等を確認し、「商談を成功させるための長期スケジュール」と「いつまでに何をやるのかというTo doリスト」を作成していただいた。

 このワークの最中も、この企業の研修部長やトレーナーがグループごとの取り組みを見て回っていた。そのトレーニングの模様を研修部長が、当日社内にいた他の営業部長等にもお伝えし同席を勧めたようで、いつの間にか見学している管理職が増えていた。そして彼らは、若手営業がフレームワークで苦戦している様子を見てため息を漏らしていた。

 同時に、若手営業の上司へのトレーニングの重要性に気づいた。

トレーニングの途中で
研修部長と営業部長が声を荒げた瞬間

 このトレーニングの途中で、研修部長と営業部長が声を荒げた瞬間があった。それは、若手営業の中の数人が「フレームワークが大切なのはなんとなくわかったんですけど、もっと簡単に売れる方法ってないんですか?」「『これが正解だ』という仕事の仕方を知りたいです」と私に質問した時だ。

 研修部長や営業部長は「楽して売れると思うな!」「失敗を恐れていたら仕事でチャレンジできないし、大きな成功をつかめない!」と大きな声で断言した。トレーニング会場の雰囲気は一瞬で凍りつき、若手営業は全員しょんぼりしてしまった。

 この発言で、私はトレーニングがやりにくくなった。