「プレゼン思考」で仕事に向かうスタンスが変わる

メンバーが「プレゼン思考」を共有すれば、事業スピードが最速化する松竹(株)映像本部メディア事業部 岡田雄介さん

 では、「プレゼン研修」で、社員にどんな変化があったのだろうか?
映像本部メディア事業部の岡田雄介さんは、「プレゼン研修をきっかけに、仕事に対する意識まで変わった」という。

 その最大のポイントは、前田氏が研修で伝えている「社内プレゼンのロジック」にある。わかりやすいプレゼン資料をつくるためには、シンプルなロジックで資料が組み立てられている必要がある。そして、そのロジックはたったひとつ。「1課題」→「2原因」→「3解決策」→「4効果」の4つの要素が、この順番で並んでいること。このポイントを押さえて資料を構成すれば、それだけでロジカルなプレゼンになり、「GOサイン」を勝ち取ることができるのだ(下図参照)。

「1課題」→「2原因」→「3解決策」→「4効果」

 これを学んだ岡田さんは、これまでの自分の社内プレゼンに「解決策」と「効果」が抜けていることに気づいたという。その結果、自分としては「プレゼン」をしているつもりでも、実際には「報告」にとどまっていたのではないかと思い至ったのだ。

「それまで、私は上司に求められたデータをただ時系列に配置した報告書を作成して、提出していました。つまり、自分の仕事はデータをまとめて上司にパスするまで、という認識でいたのです。ところが、その資料を渡しても、なかなかその先に進まない。仕事が停滞して、『あれ? そもそも我々は何をしたかったんだっけ?』という話になることが何度かあったんです。それで、上司と話し合って、『解決策』と『効果』までを含んだ提案型の資料をつくることにしたんです」

 ただし、当初は苦心したという。なぜなら、シンプルでわかりやすいプレゼンにするために、前田氏の社内プレゼン術では、「本編スライドは5〜9枚でまとめる」のが原則だからだ(下図参照)。

「本編スライドは5〜9枚でまとめる」

 この枚数で上記の4つのロジックを組み立てるためには、1枚1枚のスライドに盛り込む情報を徹底的に絞りこまなければならない。その際のポイントは、「決裁者が意思決定するために必要な情報は何か?」を明確にすること。決裁者の目線で、収集した情報の軽重を見極め、意思決定に不可欠な情報だけを厳選する必要があるのだ。慣れない作業だったが、そのプロセスに意味があったと岡田さんは話す。

「決裁者の目線で情報をしぼりこんでいくと、伝えるべきことが明確になり、結果的にわかりやすく伝わりやすい資料になっていくのを実感しました。資料を作りながら、自分の思考自体もクリアになっていく感覚でした」

 そして、このときに作成したプレゼン資料は決裁者(役員)まで持ち込まれ、会社全体の進むべき方向に合致しているということで、この方向で進めようという意思決定の後押しになったのだ。

「嬉しかったですね。これまで私は、『上司にボールをパスして終わり』という意識でいましたが、プレゼン研修を通して意識が変わりました。そして、たとえ役職がなかったとしても、資料ひとつで会社を動かすことができることを実感できて、非常にいい経験になりました」と岡田さん。まさに、「プレゼン思考」を身につけることで、仕事に向かうスタンスが大きく変わったのだ。