加茂院長は「痛みというのは通常、神経線維の先端についている痛みセンサーがキャッチする。神経の途中で痛みが発生したり、感知されたりすることはない。ちなみに神経は、かなりの圧迫に耐えられるようにできています。例えば足の裏はいつも体重の圧迫を受けていますが、それで足の裏の神経がおかしくなるということはありません」と言う。

 つまり、ヘルニアや狭まった脊柱管で圧迫されたぐらいでは、神経に痛みが起きることはない――。

 これ、かなりショックな事実なのではないだろうか。

 にわかには信じがたく、「眉唾」のように感じるかもしれないが、実際、海外では、椎間板ヘルニアの手術はほとんど行われなくなっており、厚労省のワーキンググループが2018年に出した『慢性疼痛治療ガイドライン』にも「手術」の項目はない。

 それなのになぜ、治療の切り札のごとく行われ続けるのか――。

「日本の慢性痛医療は海外の先進国と比べ、20年以上遅れている」と横浜市大ペインクリニックの北原雅樹診療教授も嘆く。

 整形外科や脊椎外科では、慢性的な腰痛や下肢痛はあくまでも椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、あるいはすべり症などの構造異常が原因で、それらを手術して治せば、痛みも消えると考えているらしい。

「現在、日本の一般的な整形外科医が慢性痛の患者さんに対して行っているのは、科学ではなく、先輩医からの“言い伝え”に従った治療法です。1980年代中頃以前の医学。上からの指示に平身低頭して従う『御意』体質の産物ですよ」(加茂院長)

◎参考資料
以下はヨーロッパのガイドライン。「牽引」から下、エビデンス(科学的根拠)の低い、効果が認められない治療法と判定された中には、現在も日本の整形外科で普通に行われている治療法が並んでいる。