組織にいると、「この情報は私だけが持っている」ということが大きな力になります。政治の世界はその最たるもので、大した情報ではなくても、いち早く情報を握っていると、偉そうにできます。

 僕が特定の誰かにだけ自分の考え方や方針などを伝えたとしましょう。その彼ないし彼女が、僕の考えを他の人に正しく伝えてくれるのならまだいいのですが、自分の意見を通すために「これが知事の意向だ」と勝手に言うこともできてしまいます。実際に知事からどんな指示が出たのかを周囲は通常知ることができません。ゆえに、「この人には知事からの情報が集まっているんだな」と周囲が感じることが、その人が組織内で力を持つポイントになります。組織の中で政治力を持とうとする者はそれにやっきになり、自分こそが知事に近いんだ、自分こそが知事から情報を得ているんだということを周囲に示そうとします。

 たとえば知事室に自分だけが入り、扉を閉め切って密談している様子を周囲に見せます。また会議のあとに周囲の者を知事室から出して、自分と知事だけの密談の形を周囲に見せます。これらは常套手段。その他、たまたま知事から聞いた情報をすぐに周囲に知らせて、自分が第1次的に知事から情報をもらう者だと周囲に示すこともありますね。

 こういうことによって、ある特定の者が変な政治力を持ってしまうと、知事からの指示が本当にあるかどうかにかかわらず、周囲は、その人の言うことを聞かざるをえなくなります。

 ですから、特定の人が「知事の意向」というものを使って変な組織内政治力を発揮できないように、僕は幹部全員に、ひいては転送を通じて組織メンバーの全員に、メールで情報を流して共有する形にしたのです。

 そもそも「情報を知っていること」と「業務遂行能力」は別物です。業務能力以外のおかしな政治力を行使できないようにするには、巨大組織であればあるほど情報をフラット化することが必要でした。

 大阪府庁では知事の方針、考え、思考方法という情報がオープンになっていますから、誰か特定の人が「知事の意向」を歪めて伝えることはできなくなりました。こうして組織内政治力を使った不透明な組織運営が生じないようにしたのです。この方法は、大阪市長に就任した後に大阪市役所のマネジメントにも利用しました。

(弁護士 橋下徹)

※本文は書籍『実行力 結果を出す「仕組み」の作りかた』を一部抜粋して掲載しています。