昼下がり。オフィスの電話が鳴った。「Aさんの代理だという方からのお電話ですけど、出られますか」
Aさんは新興上場企業の社長である。それほど深い親交はないが、一度イベントでご一緒したことがある。「あらま、なにかあったのかな」と心配になりながら電話に出ると、相手はこう話し始めた。
「Aの代理のBです。Aと交流のある、特別に選ばれたエグゼクティブだけを対象としたセミナーをご紹介させていただきたくて、お電話しました」
社長「代理」をかたり、営業成績を上げる
なんのことはない。要するに営業の電話であった。ガクッときたが、一応「代理」ということなので、Aさんとじかにお話をしているつもりで拝聴し、丁寧にお断り申し上げた。ご一緒した際にAさんは、企業がいかに社会的な責任を負っているか、ブランドを守り維持するために社員の誠実な行動がいかに大事かを力説されておられたので、とても立派な企業だと思っていたのだが…。
似たような話は、過去別の会社で見たことがある。「弊社社長のCの秘書でDと申します。御社のE社長にご連絡したい件がありまして」などと、企業が営業部員に電話をかけさせるのである。普通の営業電話では、まず社長と話をすることはできないので、社長秘書をかたるというわけだ。